遺言を作成する際に、漫然と遺言を作成してしまい、まったく役に立たない遺言となってしまったり、

あるいは、要式を充たしていないためにそもそも遺言自体が無効となってしまうケースが考えられます。

遺言を作成するにあたり、より効果的な遺言とするために知っておくべきポイントは、次の7つになります。

  1. 遺言の種類について
  2. 相続人について
  3. 遺留分について
  4. 思いを告げる「付言」
  5. 予備的な遺言
  6. 祭祀主宰者について
  7. 費用について

次にそれぞれの項目について解説をしていきます。


1.遺言の種類について

遺言の方式には、普通方式遺言特別方式遺言があります。

普通方式遺言の中にもそれぞれ次の方式があります。

  • 公正証書遺言
  • 自筆証書遺言
  • 秘密証書遺言

特別方式の遺は、死が差し迫った状態や船舶で遭難の状況にある際など危急の状況下での遺言の定めと
なりますので、お読みいただいている方は、普通方式による遺言について知っていれば問題はないかと思います。

 

時々お問い合わせをいただくことで、「ご夫婦共同で遺言を作成したい」とのお問い合わせをいただく
ことがありますが、共同遺言というのは遺言の効力はなく万一共同遺言を作成してしまった場合、
その遺言は無効となりますので、ご注意ください。

 

普通方式遺言のそれぞれの内容メリットデメリットについて解説いたします。


公正証書遺言

内容

遺言者本人が公証人に証人2人以上の前で口授でその遺言の内容を伝え、公証人が遺言者の意思を筆記し遺言を作成し、
遺言者と証人がそれぞれ正本に署名・押印をする方式となります。

メリット

法律のプロである公証人が遺言を作成するため無効な遺言とはなりずらい事。

正本は、公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がない

デメリット

遺言作成費用がかかってしまうこと(公証役場手数料や証人の日当)

 

自筆証書遺言

内容

遺言の全文・日付・署名自署で行い、遺言押印をし、遺言書に封をしてその封の綴じ代にも封印
をすること(認印でも可ですが、より効力を持たせるためには実印の方が望ましい)
(財産目録等についてはワープロ作成でも可

メリット

費用がかからないこと、証人が必要ないこと

デメリット

いざ相続が開始した際は、遺言について家庭裁判所の検認」が必要となること

要式を充たしていない場合無効となりやすい事、保管をご自身でしなくてはならず、

相続人による破棄や改ざん、紛失のリスクがあること

自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度

秘密証書遺言

内容

作成した遺言に遺言者が署名・押印をし、封じた後、証書に押印した印を持って封印をすること

封書を公証人1人と証人2人以上の前に提出し、自己の遺言書である旨と氏名・住所を申述すること

メリット

遺言の中身を誰にも知られないこと

デメリット

いざ相続が開始した際は、遺言について家庭裁判所の検認」が必要となること

要式を充たしていない場合無効となりやすい事。自筆証書に比べ費用もかかってしまうこと

 

以上を踏まえたうえで、どの方式で遺言を残すかを検討ください。


 

それとよくご質問をいただくことですが、「遺言」の効力が発生するのはあくまでも「相続の開始」です。
つまり遺言者が死んでから初めて効力が発生することになります。

ですので、「遺言」を作成したからと言って、生存中はいつでも作成した遺言を撤回することができますし、
仮に「相続させる」とした財産であっても、生存中に処分(費消したり、売却したり)した財産は、
その処分行為によって撤回したものとみなされます。

更に新たな遺言を作成することで前の遺言を撤回したことにもなります。

 

遺言の内容に反する行為をした場合に罰則の適用になるのか?

などのご質問をいただきますが、そんなことはございませんのでご安心ください。


2.相続人について

遺言を残す上でも誰が相続人となるかを把握することは非常に重要となります。加えて遺留分の問題もあります。

遺言作成相談者で勘違いをされていて相続人ではないと思っていたが実は相続人となるケースについて例示したいと思います。

ケース1)

子供の内の一人を普通養子として他人の養子とした場合、他の家の養子となったその子も相続人になります。

ケース2)

息子が子連れ者と結婚し、その連れ子と養子縁組をしたが、その後、離婚をしたにも関わらず縁組を解消しないまま

息子が亡くなってしまった場合、その連れ子は、息子へ相続するはずだった財産を代襲相続する権利があります。

ケース3)

認知をしていない子供がいるが、遺言で認知をすることによって相続人とすることができます。

ケース4)

まだ生まれていないが胎児として母親の中に子供がいる場合、胎児も相続人となります。

ケース5)

非行や虐待をした相続人である子供を遺言の中で廃除をし、相続人の地位を外すことができます。


 

3.遺留分について

仮に遺言を残したとしても、その思いが必ず実現するとは限りません。

 

民法の定めにおいて遺留分という制度があり、相続人が相続に関し保障されている最低限の取り分があります。

遺留分を侵害した遺言を作成したとしても、遺留分を侵害された遺留分権利者が、侵害額を請求した場合、
その侵害額を支払わなければならないルールとなっています。

 

では、遺留分を侵害するとわかってした遺言は無効となるのでしょうか

 

それでもある想いがあって遺留分を侵害する遺言を残したいのであればするべきだと思います。

遺留分を侵害した遺言」も遺留分権利者が、相続を知ってから1年、相続の時から10年以内に請求する
意思表示をしなかった場合は、その遺言も有効です。

 

ただし、遺留分侵害額請求をされた場合の対処についてもしておくべきかと思います。

例えば生命保険によるリスクヘッジなども有効と考えます。


4.思いを告げる「付言」

相続が開始し、相続人が遺言書を手に取って実際に見たときに他の相続人と比較して自分の取り分が少な
かった
場合、その相続人はどんな思いを抱くでしょうか?

 

自分は、「親から愛されていなかったのだろう」と感じたり、「何故そのような内容なのか?」と疑問が生じると思います。

生前にとても仲が良かった家族に溝が埋まれ、相続をきっかけに不仲となる可能性もあります。

とはいえ、遺言者には、遺言者なりの合理的な理由があって考えた末の内容かと思います。

 

そんな時には、ぜひ遺言の中に「付言」(ふげん)を付け加えてください。

遺言の効果としては、法律上何もない「付言」ですが、「相続人の何故?」を解消する重要な部分になります。

※「付言」とは、相続人に対する思いを告げる短い手紙のようなものです。

 

例1)長男は、私の事業を継いで社員の生活もかかっているので長男に相続させることとした

例2)子供たちはいずれ順番で引き継ぐことになるのでまずは、お母さんの生活を第一に考えてください。

など、相続人に配慮した付言を付け加えるとより円滑に遺言の内容を実現することができると思います。


5.予備的な遺言

せっかく考えた遺言の内容ですが、相続させると指定した相続人であっても相続人の方が先に亡くなってしまったり

或いは遺言者と同時に亡くなってしまう場合も想定されます。

 

また、遺言執行者を指定していたが、遺言執行者が相続開始する前に亡くなってしまう場合も想定されます。

もし、相続人が遺言者よりも先に亡くなってしまった場合のことについて何も遺言の内容に盛り込まなかった場合
はその遺言は何の意味も持たない紙切れになってしまいます。

 

遺言者は、相続させると決めた者が遺言者よりも先に亡くなった場合のことを想定して予備的な遺言を残すべきです。

遺言執行者についても予備的な事項を定めることによって、遺言の執行をスムーズにすることができます。


6.祭祀主宰者

辞書によると、祭祀(さいし)とは. 祭祀は、祖先や神をお祭りすることを表します。

祭祀主宰者とは、祭祀主宰するのことです。 【祭祀】を簡単に言うとご先祖様の供養をすることです。

 

具体的には法事を執り行ったり、お墓や遺骨の管理、菩提寺とのやりとりです。

 

民法の定めによると、系譜や祭具、墳墓などは相続の対象財産とはなりません。

 

その所有権の承継は、通常は慣習に従って承継し、遺言者が主宰すべき者を指定した場合、その者が承継します。

 

承継者を指定せず、慣習も明らかでないときは、家庭裁判所が定めることとなりますので、遺言の中
祭祀主宰者」を定めておくことは重要なこととなります。

 

※世の中の慣習では、長男が祭祀主宰者となる慣習が多いようです。

 

第八百九十七条 
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

7.費用について

当然のことながら遺言を作成しようとした場合に推定相続人の正確な情報財産についての正確な情報の記載が必要
となりますので、ざっくりどの程度の費用がかかるかを説明いたします。

ご自身の現在から出生まで遡った戸籍を収集費用

戸籍の全部事項証明書 1通あたり450円

除籍謄本・改正原戸籍 1通当たり750円

戸籍の附票      1通当たり300~450円

人によってですが、転籍を繰り返している人で数千円から数万円までかかります。

 

不動産に関する書類

不動産登記事項証明書 1通当たり600円

固定資産税評価証明書 1通当たり300円

 

公証証書遺言にした場合の公証役場手数料

公正証書遺言にする場合は、公証役場での手数料がかかります。

遺言の手数料については、次の表のとおりとなります。

目的の価額 手数料
100万円以下のもの 5,000円
100万円を超え200万円以下のもの 7,000円
200万円を超え500万円以下のもの 11,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの 17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下のもの 23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下のもの 29,000円
5,000万円を超え1億円以下のもの 43,000円

1億円を超えるものについては、超過額5,000万円までごとに、3億円までは13,000円

10億円までは11,000円、10億円を超えるものは8,000円43,000円に加算

 

ア)相続及び遺贈を受ける者が2人以上ある場合、各相続人及び受遺者ごとにその人が受け取る

利益の総額によって手数料を算定し、それを合算した額となります。

イ)祭祀主宰者の指定は、11,000円となります。

ウ)目的の価額の総額が1億円以下の場合は、11,000円加算となります。

エ)秘密証書遺言は、11,000円

オ)正本・謄本作成費用として1,500円×2 (4枚を超える場合1枚ごとに250円加算

法律の専門家に頼んだ場合(弁護士・司法書士・行政書士等)

有効な遺言の作成のためのお手伝いができます。

具体的には、推定相続人調査から相続財産の特定遺言の文案作成公証役場での証人

などのお手伝いができます。

遺言の種類により3万円~10万円程度

 

当事務所では

  • 一般的な法律的な見解についての質問やメールによるご質問などは、無料で行います。
  • ご訪問による個別具体的なご相談遺言の文案についてのチェックは、1時間5,000円
  • 自筆証書遺言作成のための相続関係説明図作成(推定相続人5名まで)遺産目録作成(総額財産5,000万円以下)は、3万円
  • 上記に加えて自筆証書遺言の文案作成を含む場合は、5万円~
  • 公正証書遺言の作成(相続関係説明図・遺産目録・遺言文案・公証役場との打ち合わせ・証人手配)10万円~

※同時にご夫婦2名分の遺言作成をする場合は、割引いたします。

桜酔書士ブログ

https://j-takagi-office.com/gyouseishosi/

 

 

 

冊子の表紙

遺産相続でお困りの方必見!相続手続きに必要な8つの項目

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