マンション管理費等の滞納問題

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昨今問題となっている分譲マンションの管理費等の滞納問題について書きたいと思います。

分譲マンションは、通常の戸建て住宅とは違い、その所有の形態は区分所有という形になります。

建物の区分所有とは、一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものでその各部分をそれぞれ所有権の目的とすることを言います。つまり、簡単に言うとマンションの中の1戸を所有することを言います。

分譲マンションの区分所有が通常の戸建所有と違う点は、土地に関しては、「所有権」というよりも「敷地利用権」という所有するための建物の敷地の権利になります。

マンションは一棟の建物の中に、「専有部分」と「共用部分」があり、「専有部分」は、区分所有権の目的たる建物の部分を言い、「共有部分」は、専有部分以外の建物の部分専有部分に属しない建物の附属物及び附属の建物を言います。例えば、共用廊下やエントランス、ベランダ、ゴミ捨て場などです。

区分所有者は、「専有部分」の排他的使用・収益ができ、「共用部分」については、他の区分所有者の共同の利益に反しない利用ができると考えられます。

共用部分は区分所有者全員の共有に属し、その持ち分に応じて管理の費用を負担し、区分所有者全員で構成される団体(管理組合)によって管理され資産価値が維持されます。

つまり何が言いたいかと言いますと、分譲マンションは、賃貸マンションとは違い、共有部分の保存管理の義務は、各区分所有者構成員にあり、管理費・修繕積立の支払いがあってはじめて生活目的が達成されることになります。

管理費・修繕積立の支払いが重要であることが理解いただけたでしょうか?

管理費等の滞納戸数の増加

ところが近年、マンションの管理費等の滞納が増加しています。

平成30年の国土交通省の統計によると、全国の分譲マンションで管理費等の滞納がまったくない管理組合は、全体の62.7%との事です。

滞納件数が0%超10%以下の管理組合は、24.4%との事です。

10%超の管理組合は、0.2%との事です。

管理費等の滞納があると共有部分の維持管理に支障をきたすことになり、また、滞納額が多大になると支払いも困難になり、時間が経過するとより回収の費用や期間が生じてしまうことから、なるべく早く対応することが重要かと思われます。

業務委託の一環として管理会社を通して、連絡や督促をすることも可能かと思います。滞納者が真摯に応じて支払いの意思表示をしていればよいですが、いよいよ支払いも滞り、滞納額が再度増えていく場合は、債権者たる管理組合として話し合うことが必要になるかと思います。

任意の話し合いの中で、探るべきことは、滞納の理由返済計画だと思います。滞納者に支払いの意思があり、事情があるようでしたら、分割払いを検討しても良いかと思いますが、話し合いを拒否したり、支払う意思のない場合は、いよいよ法的な措置の決断をしなくてはならないかもしれません。

滞納者に対する法的措置の根拠について

管理組合として法的措置をとる場合、やはり法律的な根拠を知っているかいないかでその決断に差異が出てくるような気がいたします。

そこで、滞納者に関わる法律について触れたいと思います。

まず、分譲マンション等の権利義務に関わる事項を定めた法律は「建物の区分所有等に関する法律」(区分所有法)になります。

区分所有法で関連する条文を記載いたします。

(区分所有者の権利義務等)
第六条 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。

 

(先取特権)
第七条 区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。
2 前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。
 

先取特権とは

先取特権は、(さきどりとっけん)と読みます。先取特権とは、法律で定められた債権を有する者が、他の債権者に優先して弁済を受けられる権利を言います。

例えば、管理組合(区分所有者)が管理規約に基づく管理費等の債権について、滞納をしている区分所有者(債務者)の区分所有権や債務者の建物の中に収容されている家財や動産について、債務者の他の債権者(抵当権設定した抵当権者や金銭を貸した一般債権者)よりも優先して先取特権があるということになります。

そして、2項の規定は、法定一般先取特権の順位は、共益費雇用関係葬儀費日用品の供給の順位で決められていますが、管理費等の債権の優先権は、共益費用とみなされるので、順位は一番になるという意味になります。

話は逸れますが具体例を挙げます。

B銀行に借入800万円がある自営業者Aさんがいたとします。Aさんの手元現金は、1,000万円しかありません。事業がうまくいっていなかったAさんは、マンションの管理費等の滞納額が100万円あり、従業員Cさんに対する未払い給与が50万円あり、亡くなったAさんの妻のために葬儀をした際の、葬儀社への未払い金が150万円あり、未払い光熱費等で30万円あったといたします。その場合、1,000万円のうち優先的に弁済してもらえるのは、一般の先取特権の原則にのっとりますと、次の順位のようになります。

  1. マンションの管理費 150万円
  2. 未払い賃金     50万円
  3. 葬儀費用      150万円
  4. 光熱費       30万円
  5. B銀行       620万円

つまり、一般の債権者のB銀行に先んじて弁済を受けられることになります。

義務違反者に対する措置

(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
第五十七条 区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
2 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
3 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
 
 
 
(区分所有権の競売の請求)
第五十九条 第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。
2 第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
3 第一項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。
 
区分所有法におきましては、究極的・最終的には管理組合が集会の決議をもって滞納区分所有者の区分所有建物を競売請求ができることとなっています。
 
区分所有者の共同の利益に反する行為」には、管理費の滞納もこれにあたると考えられます。
 
ただし、「他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」という条件を充たさないと競売をすることは出来ません。
 
まずは、「内容証明郵便による催促」や「支払督促」、「少額訴訟」、「通常の訴訟」を検討するべきかと思います。
 
そして、区分所有法59条競売は、競売の申立ての間に債務者が第三者に区分所有権を譲渡した場合は、もはや競売ができません。その場合は、新区分所有者が、滞納分を承継することになります。
 
分譲マンションという形態での生活には、常に「共同の利益」という意識が求められます。
 
他の区分所有者の共同利益を守るためには、酷ではありますが、売却も考慮するべきと考えます。
 

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