連帯保証人間の求償権

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商人の間や個人間で金銭貸借をする契約を、金銭消費貸借契約と言います。住宅ローンなどが代表的なものになります。勿論、住宅ローン以外でも会社の運転資金やら個人の遊行目的のためやらで金銭の貸し借りは、日常的に行われています。

一般的に、借りたお金は、利息を付して分割で返済するという契約が大多数ではないかと思います。そして、返済には期限が付されることが一般的です。

期限の利益

民法上、「期限」については、次のように定められています。

(期限の到来の効果)
第百三十五条 法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない。
2 法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。
 
(期限の利益及びその放棄)
第百三十六条 期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
2 期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。
 
(期限の利益の喪失)
第百三十七条 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
そして、金銭消費貸借契約における借主(債務者)は、返済期が到来するまでの間は金銭を自由に費消することができるという利益を有します。これを「期限の利益」といい、期限が到来しないことによって当事者が受ける利益のことをいいます。
 

債務の履行に期限がつけられるのは、債務の履行を猶予するためであるのが通常で、民法は、期限は債務者の利益のために定めたものと推定しています。(136条1項)

期限が到来するまでの間に、債務者にその信用を失わせるような一定の事実が発生した場合には、債務者は期限の利益を喪失します。その結果、債権者は直ちに債務の全額の履行を請求することができます。

法定された期限の利益の喪失理由は、第137条に書かれた通りですが、法律行為の当事者の特約によって、一定の事実が生じた場合、当然にまたは債権者の請求によって期限の利益を失う旨を定めることもできます。

例えば、「2回以上支払期限までに支払いを遅延した場合は、期限の利益を失い、ただちに全額を返済する」などの特約になります。

このような特約を期限の利益喪失約款(期限の利益喪失特約)と呼び、数年で返済をすればよかったものが、一括返済をしなくてはならないなどの不利益となりますので、契約時にはその中身をよくご確認ください。

さて、今回僕が書きたかったことは、連帯保証人間の求償権についてです。

連帯保証人間の求償権

銀行やその他個人間での金銭の貸し借りにおいて、貸主が、人的担保という事で連帯保証を求めることが往々にしてございます。金額が大きくなればなるほど、取引の安全のために複数の連帯保証人を求めるケースがあります。

ちなみに保証人の定義は、下記となります。

第四百四十六条 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。

金銭の借主を「主たる債務者」といい、主たる債務者が債務の返済をしないときに、保証人はその債務の返済の責任を負います。単なる保証人と連帯保証人の違いは、保証人が複数いる場合、単なる保証人は、債務を保証人の頭数で割った分までしか責任を負いませんが、連帯保証人は、複数いた場合でも全額の責任を負います。

 

つまり、主たる債務者が債務を履行しない場合、貸主が、連帯保証人の一人に対して、「全額返済せよ!」といった場合、連帯保証人は、主たる債務者に代わって債務を全額弁済しなくてはなりません。

例えば弁済を求められた連帯保証人が、貸主に対し、他にも連帯保証人がいるので、半分しか払いませんと言っても貸主に対抗することは出来ません。

では、貸主に対し全額弁済をした連帯保証人は、同じく連帯保証を引き受けていた他の連帯保証人に対し、何らかの請求をすることができるのでしょうか?

保証人間の求償権

保証人が債権者に対し弁済した場合、弁済した保証人は主たる債務者に対し、求償権を取得します。

(委託を受けた保証人の求償権)
第四百五十九条 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為(以下「債務の消滅行為」という。)をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額)の求償権を有する。
同一の債務について二人以上が後生債務を負担することを共同保証といいます。共同保証人間の求償関係については、民法442条は、
(連帯債務者間の求償権)
第四百四十二条 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。
と規定し、465条1項において共同保証人間についても求償権を認めています。
(共同保証人間の求償権)
第四百六十五条 第四百四十二条から第四百四十四条までの規定は、数人の保証人がある場合において、そのうちの一人の保証人が、主たる債務が不可分であるため又は各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、その全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。
各保証人がそれぞれ連帯保証をしている場合、民法465条1項の「各保証人が全額を弁済すべき旨の特約がある」ときに該当するため、民法442条が準用され、連帯保証人の1人が自己の負担部分を超えて弁済したときは、他の連帯保証人に対し、各自の負担部分について求償権を有することになります。
 
このような共同保証人間の求償権が認められるのは、共同保証人の1人が債権者に対し弁済をした場合において、主たる債務者の資力が十分でなく、主たる債務者からの求償では十分な履行を得られないとき、弁済をした保証人だけ損失を負担するのは保証人間の公平に反するという事にあります。
 

保証人間の負担部分

連帯保証人間の負担部分については、次の様な順序で決まるようです。

  1. 保証人間で合意がある場合その合意
  2. 合意がない場合は、各保証人間の受益の割合
  3. 受益の割合が不透明な場合は各保証人平等

また、負担部分についての連帯保証人間の合意は、書面や口頭による明示的なものだけではなく、保証契約時の事情、連帯保証人の職務、地位、主債務者との身分関係や保証人の受益状況等から黙示的な合意として認定されることもあるようです。

過去には、全額弁済した連帯保証人の負担はなく、他の連帯保証人に対して全額負担する旨の黙示的な合意があったとする裁判例もあるようです。

保証人間の求償権の消滅時効

共同保証人間の求償権は、保証人が債権者に対し弁済することによって取得します。ところで主たる債務者に対する求償権についての消滅時効の中断が共同保証人間の求償権の消滅時効の中断となるかが問題となります。

消滅時効の中断とは、時効が進行することを中断し、時効の起算を振り出しに戻すことを言います。


この点について、最高裁は

「民法 465 条に規定する共同保証人間の求償権は,主たる債務者の資力が不十分な場合に,弁済をした保証人のみが損失を負担しなければならないとすると共同保証人間の公平に反することから,共同保証人間の負担を最終的に調整するためのものであり,保証人が主たる債務者に対して取得した求償権を担保するためのものではないと解される。したがって,保証人が主たる債務者に対して取得した求償権の消滅時効の中断事由がある場合であっても,共同保証人間の求償権について消滅時効の中断の効力は生じないものと解するのが相当である。」と判示しました(最高裁平成 27 年 11 月 19 日判決)

つまり、弁済をした連帯保証人が、主たる債務者に対し、時効の中断をしたとしても、他の連帯保証人に対しては時効の中断をしたことにはならないので、別個に時効中断をする必要がありますので、ご注意ください。
 
以上、連帯保証人間の求償権についてでした。
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