本日は、年明け早々の建設業許可新規申請に行ってきました。毎度申請については、一筋縄ではいかなくて諸々の注意が必要になります。
特に許可の要件である専任技術者について、国家資格等を持たない10年の実務経験で許可を取得しようと考えている方にどんな点を疎明して、どんな書類を準備すればよいのかについて注意点を記したいと思います。
まず、建設業許可で絶対に必要となる人的要件である「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」についてです。
目次
1.経営業務の管理責任者とは
経営業務の管理責任者の定義
「経営業務の管理責任者の経験」とは、営業取引上、対外的に責任を有する地位(法人の役員や個人事業主、支配人、支店長など)にあって、建設業の経営業務について総合的に管理・執行した経験を言います。
対外的に責任を有する地位とは
対外的に責任を有する地位とは、具体的には次のような方になります。
法人の役員(商業登記簿上に取締役登記された者)
個人事業主(個人事業主として税務署に開業届をし、確定申告を行っているもの)
支配人・支店長又は営業所の代表者(常時建設工事の請負契約を締結する事務所であって支店に準ずる事務所の代表者)
まずは、建設業許可取得を検討する上で、上記要件に当てはまる人がいるのかを検討ください。
【法人の役員】
法人の役員(取締役)であることの裏付けとして商業登記簿謄本の履歴事項全部証明書をご覧ください。
役員に関する事項の欄をご覧いただきますと、取締役に関する事項が記載されています。ここに記載されている人が法人の役員になります。
ですので、会社内のみで対内的な呼称として役員の立場として通っていたとしても、登記されていない限りは、対外的な効力を持ちませんので、建設業法で言う「経営業務の管理責任者」とはなりません。
【個人事業主】
個人事業主であることの裏付けとしては、税務署に開業届を提出し、毎年確定申告をしていたはずですので、確定申告書の控え(税務署の収受印あり)をご覧ください。
収受印は次のようなものになります。
【支配人・支店長・営業所の代表】
過去に建設業許可を取得していた別会社において、支店長や営業所長としての立場としての経験があった人は、その会社での建設業許可申請書や変更届書の写しがあり、「建設業法施行令第3条に規定する使用人一覧表」に名前の記載があれば、経営業務の管理責任者として申請することができます。
2.経営業務の管理責任者の現在の常勤
経営業務の管理責任者は、常勤であることが必要です。「常勤」とは、原則として本社、本店等において、休日その他勤務を要しない日を除き、一定の計画の下に毎日所定の時間中、その職務に従事していることを言います。
要注意は、2つ以上の法人の役員となっている場合です。建設業では、常勤・専任性が求められるので、他の会社の常勤の役員の場合、いくら事務所が同一の事務所であっても認めらにくいです。
例えば、建設業であれば、建築士事務所を別法人で営業していたり、不動産業を別法人で経営しているということが往々にしてあります。経営業務の管理責任者が、建設業の他社の技術者や建築事務所の「管理建築士」、不動産業の「宅地建物取引士」と兼ねることは出来ません。
ただし、同一法人で同一の営業所である場合は、兼ねることができます。
常勤の裏付け資料
【住民票】
本店の所在地と経営業務の管理責任者の住所が遠隔地でないかを確認するためのものになります。極端な例ですと、ご自宅が大阪で本店が東京の場合、果たして毎日所定の時間中、職務に従事できるのかの確認となります。
【健康保険被保険者証の写し】
健康保険証を見ていただくと、事業所名称と資格取得年月日の記載があり、被保険者本人が申請しようとする会社に勤務しており、かつ有効な保険証のため常勤であることが証明できます。
但し、土建国保や国民健康保険にご加入の場合は、事業所名称の記載がありません。これでは、常勤の証明にはなりませんので加えていずれかの書類の添付が必要となります。
ア)健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書の写し又は健康保険・厚生年金保険者資格取得確認及び標準報酬額決定通知書の写し
ウ)確定申告書
3.専任技術者とは
「専任技術者」とは、その営業所に常勤して専ら職務に従事することを要する者をいいます。
「実務経験」とは、許可を受けようとする建設工事(業種)に関する技術上の経験をいい、具体的には、建設工事の施行を指揮、監督した経験及び実際に建設工事の施行に携わった経験を言います。
専任技術者についても経営業務の管理責任者同様に他の技術者と兼ねることは出来ません。
4.専任技術者の現在の常勤
経営業務の管理責任者同様に住民票と健康保険被保険者証の写しが必要となり、健康保険ではなく、国保等の場合は、同様にプラス書類が必要となります。
5.経営業務の管理責任者・専任技術者の実務経験
実務経験の年数については次になります。
経営業務の管理責任者
許可を受けようとする業種に関し5年以上の経験
※例えば、内装業で申請をしたい場合、内装業のみでの経験
許可を受けようとする業種以外の業種に関し6年以上の経験
※例えば内装業で申請したいが、内装業だけの経験だと5年ないが他の業種(管工事や塗装工事)と合算で6年以上
専任技術者
許可を受けようとする業種に10年以上の実務経験
※今回の記事の前提が、10年経験での申請を考えている方向けの記事です。
①実務経験の内容を確認できる資料
経営業務の管理責任者につきましては、商業登記簿の履歴事項全部証明書の中の役員に関する事項をご覧ください。取締役の就任日又は重任日が記載されています。重任の場合は、閉鎖事項証明書も取付け、5年以上や6年以上役員の立場であることをご確認ください。
法人成りする前は、個人事業主であった場合などは、もちろん法人化してからの期間と個人事業主期間の合算は可能です。
次に専任技術者ですが、建設業許可を目指そうというからには、一応は、専任技術者の実務経験として会社設立や創業から10年が経過しそうということで、そろそろ申請を考えようかという段階にあるかと思います。
ただし、10年を経過したからと言っても10年の実務経験を証明する裏付け書類を揃えられなければ、申請することは出来ません。
10年の実務経験で申請する場合の疎明書類は下記になります。
- まずは、遡ること10年分の通帳を準備できますでしょうか?
- 毎月発行している請求書の原本を遡ること10年前までの分を準備できますでしょうか?
- 請求書に工事の内訳は、記載されていますか?
- その工事内訳は、許可を受けようとする業種の工事に該当しますか?
例えば、内装仕上工事で許可を取りたいのに、空調設備工事や塗装工事の内訳の物を準備しても、実務経験にはカウントされません。
また、単なる人工出しのような請求書では、請負工事とはカウントされません。
極端に請負金額の低い工事等は、一月の内でも1~2日で仕事が終わる蓋然性が高いので、2・3件の請求書をもって1月分のカウントという場合もあります。
内装仕上工事であれば、工事の内容が、床仕上げ工事なのか、表装工事なのか家具工事なのか等、工事の内容についても内装仕上工事に該当するかを確認されます。
ここまでをクリアして、やっと実務経験をクリアすることができます。
②専任技術者の実務経験証明期間の常勤を確認できる資料
次に、その10年経験の期間の常勤性を証明する資料が必要となります。
いくつか証明する方法がございます。
まずは、健康保険被保険者証を見ていただくと、事業所名と資格取得日が記載されていますので、資格取得日以降については、健康保険被保険者証のコピーで常勤を証明することができます。
ただし、資格取得日(健康保険に加入した日)以前につきましては、別の方法で証明する必要があります。
また、建設業の会社で往々にしてある土建国保などに加入している場合は、国民健康保険ですので、その被保険者証には、事業所名の記載はありません。ですので、こちらも別の方法で証明する必要があります。
その場合は、市区町村から送付されてくる「住民税特別徴収税額通知書」の写しを期間分準備することでも可能です。
また、法人であれば過去の決算書資料は、必ず残っていると思いますし、顧問税理士さんがその控えを保管していると思います。専任技術者が、社長本人という会社がほとんどかと思いますので、その場合は、確定申告書の表紙の写し(税務署の受付印押印のもの)と役員報酬明細の写しを期間分準備することでも可能です。
③準備後の問題点
ここまで準備ができ、資料の中身を確認させていただくと、ぶち当たる問題点が浮上してきたりします。なんと建設業法で規制されている税込500万円以上の工事を請負ってしまっている場合です。
よくお客様が勘違いをしていることですが、同一元請、同一現場で500万円を超える工事であっても、請求書を500万円以下にして、2・3か月に分ければ大丈夫という都市伝説的なうわさが何故か広まっているようですが、いくら請求書を分けても同一現場であれば一つの請負となります。
合算で500万円を超えている工事を請負っている場合、それは建設業法違反となります。
そのような資料が出てきた場合、僕ならどうするか?と言いますと逃れることは出来ませんので、そのまま500万円以上の仕事も含めて資料を提出します。
当然、申請後に「行政指導」ということで口頭にて厳重注意の訓示をいただきます。国土交通省にもその情報は共有され、次に業法違反をした場合、一発で許可取消となります。
非常に足が重たい案件となりますが、画策して隠蔽しても後日問題になることを考えると、隠蔽は避けます。
3.その他のクリアーすべきこと
人的要件をクリアーできれば80%ぐらいは許可の可能性が広がりますが、その他の要件として、お金の問題と事務所の問題があります。
①財産的要件
お金の問題とは、申請の際に500万円以上の残高があることを証明する銀行預金の残高証明書を提出する必要があります。
直近の決算書の貸借対照表の自己資本部分が500万円以上となっていれば、残高証明の取り付けは不要です。下記の純資産合計額が500万円以上
そして、この残高証明書の取り付けは、申請の前一月以内という条件がありますので、申請日と残高が豊富にある日にちとの調整も必要となるかと思います。
その他にも納税状況の確認として納税証明書(法人事業税)の添付も求められますので、滞納等ないようご注意下さい。
②事務所要件
事務所についても非常に重要で、何せ「専任技術者」や「経営業務の管理責任者」の常勤スペースとなり、事務所看板、ポスト、事務スペース、電話、コピー機、パソコン、事務机が取り揃えてあるか、写真の添付が必要となります。その他、平面図、建物の全体写真、使用権原についての疎明書類が必要となることもあります。
③社会保険・雇用保険について
許可の申請には、社会保険番号や雇用保険の番号、保険料の領収にかかる証明書類も必要となります。仮に、未加入であっても、申請はできますが申請後に加入を促す通知が役所から届きます。将来は、未加入の場合、許可をさせない等の動きもあり、どうせ加入は必須となるので、早いうちに加入をしてしまいましょう。
以上、建設業許可を申請するということは、「建設業法」を遵守するあるべき姿に申請を通して矯正されることになります。しかし、「許可」を取得してしまえば、500万円問題にも悩まされなくなり、元請の信頼も得て、将来に展望が見えます。
申請をしてみると非常に大変な作業に縛られますので、一念発起して「施工管理技士」の資格に挑戦していただくともっと楽に許可が取れますし、複数の業種を一発で取得することもできます。
申請をする前に一度「施工管理技士」の資格資料を取り寄せてみてはいかがでしょうか?
お問い合わせやご質問を受付けいたします。下記から送付下さい。
よくあるご質問として、当社は許可の要件を充たしているのか等のご質問をいただきます。