抵当権の順位の譲渡と放棄

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昨日の宅地建物取引士の試験において、改めて再認識をした問題があり、備忘録のために記したいと思いました。

さすがに不動産を扱う仕事なだけに抵当権など今更ながらに細かいところでの問題が出るのだなあと思った次第です。


昨日の問題を例示すると、

債務者Aが所有する甲土地には、債権者Bが一番抵当権(債権額2,000万円)、債権者Cが二番抵当権(債権額2,400万円)、債権者Dが三番抵当権(債権額3,000万円)をそれぞれ有しているが、BはDの利益のために抵当権の順位を譲渡した。甲土地の競売に基づく売買代金が6,000万円であった場合、Bの受ける配当額として、民法の規定によれば、正しいものはどれか?

1.600万円

2.1,000万円

3.1,440万円

4.1,600万円

という問題でした。抵当権なんて言うとナニワ金融の世界やな!なんて思う方もいらっしゃるかもしれませんが、現実の世界では、まことしやかに行われている現実になります。

この問題のように、甲土地の価格が6,000万円しかないのにも関わらず、BさんからDさんまで合わせて7,400万円の抵当権を設定することは、可能でございます。

ですので、甲土地の不動産謄本を確認したところ、既に第二順位の抵当権まで付されていて、回収の余地がないと見えるときにおいても抵当権を設定することは可能です。

何故なら、抵当権の順位は、抵当権者間の合意により順位を変更することができるからです。


では、通常問題文のケースのようなとき順位の譲渡等が行われなかった場合は、どのように配当されるでしょうか?

“民法373条 同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による”

つまり6,000万円の競売による売買代金を一番抵当権者から順に配当していくこととなります。Bさん2,000万円Cさん2,400万円Dさん1,600万円(1400万円は回収できず)となります。

ただし、先ほども触れたように、抵当権の順位は変更ができます。

“民法374条 抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない”

その他にも、BさんからDさんへ抵当権の順位の譲渡だったり、Bさんの第一順位をDさんのために放棄ということもできます。

“民法376条 抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる”

先の問題に戻りますが、この順位を譲渡したのか、放棄したのかにより、配当額の効果が変わってきます。


Ⅰ.抵当権の順位の譲渡

順位の譲渡の場合ですと・・・

第二順位のCさんの取り分は変わりませんから、Cさんの取り分は2,400万円のままです。それを考慮した上で、本来の取り分(配当分)であるBさん2,000万円Dさん1,600万円の合計は、3,600万円になります。

この3,600万円の取り分から、Dさんは債権額3,000万円を優先的に配当が受けられることとなりますので、Dさんが3,000万円Bさんが600万円となります。

つまり問題文の解答で言うと、答えが1の600万円になる訳です。


Ⅱ.抵当権の順位の放棄

対して順位の放棄の場合ですと・・・

先ほどと同じCさんの取り分は変わりません。Bさん・Dさんの取り分合計3,600万円に対し、債権額の比率により按分での配当となります。

本来の債権額Bさん2,000万円Dさんの債権額3,000万円ですので、Bさんが2/5、Dさんが3/5の按分になります。

Bさんの配当は、3,600万円×2/5=1,440万円

Dさんの配当は、3,600万円×3/5=2,160万円

となります。

つまり、譲渡と放棄では、Bさん・Dさんの配当額は、大きな差が出てしまうこととなります。

今回の試験で私は、放棄と譲渡を間違え、この問題を落とすこととなりました。

以後、備忘録のため記しました。

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