法律

事務管理について

民法には、良かれと思って他人のためにお節介をした場合の法律の規定があるのをご存知でしょうか?

例えばですが、

隣人のAが長期の海外旅行に行って留守にしている間に、A宅の窓ガラスが突風で割れてしまった。天気予報によると、大雨が降るかもしれないという。もし、そうなると、家具がびしょ濡れになることは明らかなため、代わって修理をした。或いは、ガラス屋Cに頼んで応急修理をしてもらい費用がかかったとします。旅行から帰ってきたAは、いらぬお節介であったと言ってこの費用の支払いを拒否できると思いますか?

他の例で言うと

道端で行倒れになっている人(A)を見つけたので、タクシーで近くの病院に運び、ポケットの中にあった免許証から名前が分かったので、Aの名前で治療の契約を結んだ。意識を取り戻したAは、タクシー代や治療費の支払いを拒めるでしょうか?また、Aと病院の間で結ばれた診療契約は、代理権の与えられていない無権代理による無効な契約となるのでしょうか?

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入管法改正について

現在、入管法の改正が世間の間で話題になっています。事の発端は、従来の入管法に様々な問題や支障が出てきたためです。

どんな問題が発生しているのかについては、出入国在留管理庁のHPに詳細に記されています。

日本に限らず外国人を自国の社会に適正に受け入れ、自国人と外国人が互いに尊重し、安全・安心に暮らせる共生社会を実現することは非常に重要ですが、どんな人でも入国・在留が認められるわけではありません。当たり前ですが例えば、テロリストや日本のルールを守らない人など、受け入れることが好ましくない外国人については、入国・在留を認めることはできません

そのため、日本では、法律に基づき、来日目的等を確認した上で、外国人の入国・在留を認めるかどうかを判断することとしており、入国・在留を認められた外国人は、認められた在留資格・在留期間の範囲内で活動していただく必要があり、その在留資格を変更したいときや、在留期間を超えて滞在したいときは、許可を受ける必要があります。

以上のように、日本では、在留資格・在留期間等の審査を通じて、外国人の出入国や在留の公正な管理に努めており、このように、その国にとって好ましくない外国人の入国・在留を認めないことは、それぞれの国の主権の問題であり、国際法上の確立した原則として、諸外国でも行われています。

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一般社団法人colaboの委託事業不適切経費処理問題について

現在、ネットの世界で騒がれている問題があります。時事通信社の記事を引用すると次の通りとなります。

委託事業で不適切経費 若年女性の支援巡り―東京都監査委員

どういう問題かと言いますと、虐待や性暴力を受けた10代少女たちを支援する事業を東京都から委託され行っている一般社団法人colaboとういう事業者が2021年度、女性に対する支援事業を2600万円で都から委託されたが、都に提出した書類に領収書が添付されていない事例が見つかったり、宿泊費や飲食代を水増し請求したのではないかということで東京都監査委員会から再調査勧告等を受けているという問題です。

東京都からの委託事業とは、本来行政がすべき仕事ですが、ノウハウがなかったり、職員の人員の問題で、民間の事業者にその仕事を委託したものとなり、国(厚生労働省)から地方自治体に対し、2分の1が補助金という形で交付されている事業になります。

つまり、われわれの税金から公金として事業が行われているにも関わらず、ずさんな経理処理が行われているとの指摘を受けたものになります。

事業の目的としては、崇高な目的を掲げているだけに残念ですが、公金を扱っているという重みを真摯に受け止め、領収書等情報の開示や不当に利得をしていたのであれば、返還等に応じていただきたいものですが、逆にcolabo側は、請求人に対し、名誉棄損などを理由に弁護団を結成し、訴えを起こしています。

その上、ここからは疑惑の段階ですが、colabo側は、保護した少女を沖縄の普天間基地反対のデモに参加させていたり、生活保護を不正に受給させることに加担したのではないかと言われており、政治家や弁護士などを巻き込み更に大きな問題へと展開する様相を含んでいます。

今回の一連の問題を指摘したのは、暇空茜さんという方が、行政の情報開示請求をしたうえで、住民監査請求をし、監査の結果、当該請求に理由ありと認められた訳です。

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宗教法人の解散命令2

前回宗教法人の解散命令について思うところを記載させていただきました。

ところで実際に平成8年1月30日に、宗教法人であるオウム真理教が、多数の信者と共に大量殺人を目的として、毒ガスの一種であるサリンの生成を企てた行為が宗教法人法81条1項1号の「法令に違反して明らかに公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」および2号前段の「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと」に該当することとして解散命令を受けていることは、周知の事実であるかと思います。

これに対しオウム真理教は、日本国憲法20条の信教の自由に反するという主張をしています。

日本国憲法第20条1項は下記の通りです。

第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。 いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない

さて、宗教法人法に基づく解散命令は、信教の自由を害し憲法20条1項に違反するのでしょうか?

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宗教法人の解散命令について

某宗教法人の問題が今現在も国会を賑わせており、質問権解散命令請求についての法律的見解が世間で取りざたされています。

僕個人としては、国防安全保障や経済の問題など他に優先すべき課題がたくさんあり、宗教問題により、いたずらに国会運営の貴重な時間を浪費して欲しくはないのですが・・・

岸田首相は、当初宗教法人法に基づく当該宗教法人への質問権の行使に関しても慎重な立場で、国が私人である宗教法人の権利侵害や権利を剥奪する事に関しては憲法の信教の自由という観点からも慎重でなければならないという原則に従ったことからだろうと思います。

今回は、この宗教法人法についての解釈についていろいろな意見が飛び交っていますが、宗教法人法と会社法との比較を交え、思うところを記載したいと思います。

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霊感商法問題と改正消費者契約法

霊感商法

7月8日の安倍元総理の暗殺事件から統一教会の問題が取り沙汰され、今現在、大変世間を賑わせています。

僕自身は、安倍元総理は偉大な政治家であり、アベノミクスによる株価上昇400万人の雇用創出安全保障問題とさまざまな功績を持つ方であり、安倍さんの死は日本にとって大きな喪失であると感じています。そして安倍さんが政権を担った以前と以後においては世の中の風潮がかなり変わったと思っています。

以前の日本と言えば、マスコミの力は第三の権力と言われ、報道や言論の力によって大衆世論を形成し、場合によっては世論をもって一国の首相の進退にまで発展させられていました。しかし、インターネットの発展とともに、今まで情報源が購読新聞やTVのみでしかなかった人々が情報を発信する側が操作によって事実ではないことをあたかも事実であるかのような報道をするという事実を知り、情報のソースや信憑性を深く考え、ご自身で判断する方が多くなったように感じます。

つまり大衆は、一部マスコミの報道・言論という名の権利濫用に疑問をいだいた末、新聞やTV離れが進み、以前の様な一部マスコミの力は今現在弱まったのではないかと思います。

そして、今回の統一教会の問題についても旧態依然として建設的な議論がなされないことに胸を痛めます。

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所有権に基づく妨害排除請求権と占有訴権

空の写真

昨日、テレビを見ていると興味深い番組がありました。

内容はと言うと、市川市のとある住宅地で、ある夜突然に住宅前の私道のど真ん中に自動車が放置されてしまったというもので、袋小路にある住民にとって放置車両があるために車の出入りもままならず、同じくその私道を利用する隣家においては、窓からの眺望を放置車両に阻まれてしまい、無粋な思いと迷惑を被っているとの事でした。

所有者が現れ、車両をどかしてくれるのを待つも、一向に現れません。

困った住民は、先ず警察に連絡をし、放置自動車を移動してもらおうと試みますが、放置してある場所が私道(私有地)のため、警察が介入することは出来ないと言います。

公道であれば公が所有者ですから当然ながら警察の権限で移動することは可能です。しかし今回の問題は私道の所有者と車両の所有者との間のことですから民事不介入の原則から警察が介入することは出来ません。

かくなる上で私道の所有者である住民が、自力で移動してしまってはどうでしょうか?

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市川市の行政サービスについて

役所の手続きの画像

例えばですが、人が亡くなった後、遺族は、故人の医療保険や年金その他諸々の資格喪失手続き届出を行わなければなりません。

葬儀を済ませ、49日の法要を執り行い、くたくたになりながらも、悲しみ暮れる暇もなく待ったなしで手続きをしなくてはなりません。

一度、手続きを経験された方は、非常に多くの手続きがあり、大変な労力を要する事はご存じであるかと思います。

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所有者不明土地の問題

空き家画像

相続関連の業務や宅建関連のお仕事をする方々にとっては「あるある」ではないかと思いますが、昨今の日本の現状として、所有者不明土地というのが、土地の流通を阻害していたり、再利用のためのコストとなっている現状があります。

所有者不明土地とは、法務省のHPによると、次のような土地のことを言います。

  1. 不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地
  2. 所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地

何故このような所有者不明が起こってしまうかというと原因は、所有者が死亡し相続が発生したにも関わらず、相続登記が未了のままである場合と、所有者が引っ越し等により住所が変更となったにも関わらず、住所変更の登記が未了のままということが大きな原因となっています。

登記未了の原因として次のような背景があると言われています。

  1. 登記の申請は義務ではなく、申請しなくても不利益を被ることは少ない
  2. 都市部への人口移動や人口減少・高齢化の進展等により、地方を中心に、土地の所有意識が希薄化土地を利用したいというニーズも低下
  3. 遺産分割をしないまま相続が繰り返されると、土地共有者がねずみ算式に増加

特に相続に関わる我々士業の中には、土地共有者がねずみ算式に増加した案件を手掛けたという方も数多くいらっしゃるのではないでしょうか?

では所有者不明土地が増大していることによりどんな問題が起こっているのでしょうか?

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従業員が起こした事故の損害を従業員に負担させることの是非について

従業員の画像

先日、業務中Aさんが社用車を使用して、Aさんの過失で事故を起こしてしまいました。

事故の内容は、相手の車の対物賠償(修理費)におよそ20万円、社用車の修理代に80万程度かかるとの事です。

Aさんの勤務する会社からは、対物賠償のうち保険で充当しきれない免責金額分と車両保険に未加入でしたので、修理費80万円のうちの40%程度を負担して欲しいとの請求がありました。勿論、Aさんの不注意で起こった事故ですから加害者本人は、Aさんになる訳です。Aさんの勤務先の会社としても給与債務よりも上回る修理費を回収するために給与債務から相殺して弁償金に充当することも辞さないといった勢いです。

果たして、Aさんは会社の要望通り、弁償をしなければならないのでしょうか?

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