児童虐待防止法と親権制限制度

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
泣いてる女の子

昨今、テレビのニュースで痛ましい児童虐待のニュースを聞くことが多く、子の権利利益を保護することは喫緊の課題で、諸々の法改正が施行されています。

今回は子の自立支援を行う法人と接する機会があり、「児童虐待」について触れたいと思います。

親が子供を育てるために親が持つ権利や義務の総称を「親権」と言います。親権は、民法に規定されており、その内容は、子供の身の回りの世話をする子どもに教育やしつけをする子どもの住む場所を決める子どもの財産を管理するなどが親権の内容となります。

(監護及び教育の権利義務)
第八百二十条 親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
 
(居所の指定)
第八百二十一条 子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。
 
(財産の管理及び代表)
第八百二十四条 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。
 
 
上記のしつけについても民法に規定があり、条文は下記となります。

(懲戒)
第八百二十二条 親権を行う者は、第八百二十条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。

ところが、実質は虐待であるにもかかわらず、しつけと称して子どもに暴力を振るったり、暴言を吐いたり、子どもの世話を放棄したりするなどの児童虐待を行う親があり、親権のうちの「懲戒権」をたてに、親権の濫用をする親が問題となっています。

児童虐待の定義

児童虐待の防止に関する法律」によると虐待の類型には4種類の類型があります。それぞれ、4種類を上げると

  1. 児童の身体に外傷を生じ、又は生じる恐れのある暴行を加えること(身体的虐待
  2. 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること(性的虐待
  3. 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること(ネグレクト
  4. 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。第十六条において同じ。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。(心理的虐待

以上、身体的虐待性的虐待ネグレクト心理的虐待の4種類になります。

児童虐待防止法に基づきできること

では、親からの虐待を受けている児童に対して一般の我々ができること、児童相談所ができること、都道府県ができることについて触れます。

  1. 通告義務・・・児童虐待を発見したものは、福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。※今般の虐待児救済への緊急性から改正児童福祉法によって、児童虐待と「思われる」場合も通告義務となります。証拠は不要です。
  2. 立ち入り検査・・・都道府県知事は職員をして、児童の住所若しくは居所又は児童の従業する場所に立ち入り、必要な調査又は質問をさせること
  3. 一時保護・・・児童相談所長は、必要があると認めるときは、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。
  4. 家庭裁判所への申し立て・・・都道府県は、家庭裁判所への申し立てにより適切な措置をとることができる。(施設への入所等の措置)

改正児童虐待防止法によって改正されたポイント

2020年4月1日以降、「改正児童虐待の防止に関する法律」によって、以下のポイントが改正されています。

体罰禁止の明文化

しつけの際の体罰禁止が明記されました。しつけそのものが禁止されたわけではなく、今後厚労省が禁止される体罰の範囲を定めます。また、民法の「懲戒権」(親権者は子の非行に対する教育のために、子の身体・精神に苦痛を加えるような懲罰手段をとることができる)が体罰容認の根拠にされてきたため、懲戒権のあり方について2年間をめどに廃止も含めて検討することになりました。

児童相談所の対応能力強化

これまで、児童相談所は子どもの保護などを行う「介入」と、保護者の相談などを行う「支援」とを同じ人員で行っていました。そのため、保護者との関係悪化を恐れて介入が遅れてしまうケースも見られました。そこで、介入チームと支援チームを分離することになりました。

そして、対応のための専門職である児童福祉司が膨大な数のケースを抱えていて、きめ細かい対応が難しい現状の改善のため、人口や対応件数を考慮して児童福祉司を増員するほか、医師と保健師も各児相に1名以上ずつ配置されます。このほか、DVの対応機関との連携強化、また転居時にも切れ目のない支援を続けるため、転居先の児相や関係機関との速やかな情報共有なども盛り込まれています。

関係機関の守秘義務再確認

被虐待児のアンケートの写しを、野田市教委が父親に渡してしまったようなケースを防止するため、学校や教育委員会や児童福祉施設の職員には守秘義務が課されていることが再確認されました。

虐待をした保護者へのサポート

虐待をしてしまう保護者の多くは、自分自身が虐待されて育ったと言われています。また、経済的、あるいは精神的に困窮している場合や、子どもの発達上の特性から育てにくさがある場合や、保護者自身の発達上の特性や経験不足からどう育てていいのか分らない場合も多いです。そこで、都道府県などが保護者に対して医学的・心理学的な知見に基づくサポートを行うよう努力することが明記されました。

親権制限制度と未成年後見制度

また、児童虐待から子どもを守るための方法の一つとして、民法には、「親権制限制度」、「未成年後見制度」があります。両制度については、児童虐待対策の実効性を高めるために、平成23年に見直しが行われ、平成24年4月1日に施行されました。

親権喪失の審判

民法では、子どもの親族などが家庭裁判所に申し立てることにより、親権を奪うことができる「親権喪失」という制度が設けられています。

(親権喪失の審判)
第八百三十四条 父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。
 
親権喪失の審判」が請求できるのは、その親族未成年後見人未成年後見監督人検察、及び児童福祉法に基づき児童相談所長となります。
 
※平成23年度以前は、請求ができるのは、親族・検察・児童相談所長に限られていました。
 
ただし、一時的な精神疾患等により二年以内にい回復する見込み等がある場合は、親権停止の審判に依ります。
 

親権停止の審判

親権喪失制度は、親権を無期限に奪うものですから、親子関係を再び取り戻すことができなくなるおそれがあります。そのため、児童虐待の現場では、虐待する親の親権を制限したい場合でも、「親権喪失」の申立てはほとんど行われていないという実状がありました。
こうしたことから、親権を奪う以外の方法で、虐待する親の親権を制限できる新たな制度を設けることなどを目的に、児童虐待防止の視点から、平成23年改正が行われました。

従来の「親権喪失」に加え、期限付きで親権を制限する「親権停止」の制度が創設されました。これは、期限を定めずに親権を奪う親権喪失とは異なり、予め期間を定めて、一時的に親が親権を行使できないよう制限する制度です。停止期間は最長2年間となります。

親権停止を請求できるのは、親による親権の行使が困難なとき、または親権の行使が不適当であることによって、「子どもの利益を害するとき」です。

管理権喪失の審判

親権の中の「財産管理権」のみを切り離して、親権者から奪う制度もございます。

(管理権喪失の審判)
第八百三十五条 父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、管理権喪失の審判をすることができる。
 
この場合、監護権のみは実の親権者に残り、財産の管理のみ裁判所の選任した者(弁護士や司法書士等)に管理権が移ります。
 

未成年後見人

親権喪失や親権停止、管理権喪失の審判がされ、親の親権が制限されたとき、家庭裁判所では、申立てにより親権者がいなくなった子どもに対して、未成年後見人を選任します。現行の制度では、未成年後見人として選任できるのは、一人、かつ、個人に限られています。しかし、一人の個人が未成年後見人を一手に引き受けることは負担が大きく、適切な未成年後見人の引受け手が見つかりにくいのが実状です。
そこで、未成年後見人選任の選択肢を広げるため、個人だけでなく、社会福祉法人などの法人未成年後見人として選任できるようになりました。

また、併せて複数の未成年後見人を選任することができるようになりました。これによって、例えば、子どもの日々の世話(身上監護)は親戚が行い、遺産などの子どもの重要な財産の管理は弁護士などの専門家が行うというように、それぞれ分担して未成年後見人の責務を果たすことができます。

様々な制度の改正があり、請求者も子本人や未成年後見人にまで拡大されたとはいえ、子本人や親族からの請求は、ハードルが高いと思われます。今後はますます児童相談所に期待が寄せられるところかと思われます。

審判停止が認められた例

児童相談所長による親権制限に係る審判の申立てで平成 25 年度において全国の児童相談所長が行った親権停止の審判の申立ての実績を一部列記します。

事例1
<申立ての背景>
・児童は白血病で輸血が必要であった。
・輸血を行わなければ児童の生命に危険が及ぶにもかかわらず、両親は宗教的
理由から輸血を拒否した。
<申立て後の状況>
・保全処分が認容されて輸血をした。
・その後、本案も認容された。

 

事例2
<申立ての背景>
・同居男性からの性的加害のために児童は保護を求めてきた。
・他のきょうだいも同居男性からの暴力暴言が怖いと訴えて保護された。
・実母は同居男性との同居継続を望み、児童らの引き取りを訴えた。
・実母が同居男性との同居を望んでいる以上、児童らへの影響を免れないため
親権停止を申し立てた。
<申立後の状況>
・本案が認容され、進路・就職に関して児童主体の援助が可能となった。

 

事例3
<申立の背景>
・児童は中学生時に保護者とのトラブルのために一時保護された。児童は家に
帰りたくないと訴え、父母も関係修復の意思がなかったため児童養護施設に
入所した。
・その後、保護者が入所の同意を撤回したため、児童福祉法 28 条を申し立て
審判が確定した。
・高校卒業に当たり、児童が就職して自立した生活が営めるように、児童相談
所から保護者に協力を求めた。しかし保護者の養育姿勢は施設入所時と変わ
らず、児童の成長に理解を示すことなく、保護者は本児との交流を拒否し続
けた。
<申立後の状況>
・保全処分、本案共に認容された。
・児童は就職が決定したが、賃貸借契約や運転免許の取得その他の支援が必要
となるため未成年後見人を選任。

以上、子供たちは未来を担い、国を作る存在です。一度刻まれた心の傷を癒すことは容易ではないと思われます。不幸の連鎖を断ち切るために僕自身も無関心ではいられないと思います。

子供を救うための制度について、なんとなくでも知識として留め置いていただければ幸いです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す