民法上の原則として、契約はいったん結ぶと守らなければならないという拘束力が生じます。通常は、債務不履行や一定の理由がなければ契約を解除することは出来ません。また、一度「買いたい」と申し込んだ以上、一定の期間は申し込みを撤回することも認められません。
しかし、事業者と消費者の圧倒的な情報量の格差等を考慮し、消費者保護の観点から民法を修正した法律として「特定商取引法」という法律において、消費者と事業者のトラブルを防止し、その救済を容易にするなどの機能を強化するため、消費者による契約の解除(クーリング・オフ)、取り消しなどを認める制度を設けています。
目次
クーリングオフとは
1.クーリングオフの概要
クーリング・オフとは、申込みまたは契約の後に、法律で決められた書面を受け取ってから一定の期間(※)内に、無条件で解約することです。(※)訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供・訪問購入においては8日間、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引においては20日間。通信販売には、クーリング・オフに関する規定はありません。
保険契約においては、保険業法309条にてクーリングオフの定めがあります。
不動産の売買契約に関しては、宅建業法37条2にてクーリングオフの定めがあります。
その他個別の法律で「クーリングオフ」を定めた法律がございます。
「クーリング」(冷静に頭を冷やして)「オフ」(撤回や解除をする)という意味になります。
2.特定商取引法の対象となる業者
特定商取引法で定められた対象取引は、下記となります。
- 訪問販売・・・事業者が消費者の自宅に訪問して、商品や権利の販売又は役務の提供を行う契約をする取引の事。 キャッチセールス、アポイントメントセールスを含みます。
- 通信販売・・・事業者が新聞、雑誌、インターネット等で広告し、郵便、電話等の通信手段により申込みを受ける取引のこと。 「電話勧誘販売」に該当するものを除きます。
- 電話勧誘販売・・・事業者が電話で勧誘を行い、申込みを受ける取引のこと。 電話をいったん切った後、消費者が郵便や電話等によって申込みを行う場合にも該当します。
- 連鎖販売取引・・・個人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせるかたちで、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品・役務の取引のこと。
- 特定継続的役務提供・・・長期・継続的な役務の提供と、これに対する高額の対価を約する取引のこと。 現在、エステティックサロン、語学教室など7つの役務が対象とされています。
- 業務提供誘引販売取引・・・「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引のこと。
- 訪問購入・・・事業者が消費者の自宅等を訪問して、物品の購入を行う取引のこと。
2.クーリングオフの期間
クーリングオフの期間のカウントは、業者から「クーリングオフができる旨の書面」の交付を受けた日からカウントされます。
クーリングオフの期間は、
- 訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、訪問購入、不動産の売買契約、保険契約につきましては、8日間
- 連鎖販売取引、業務提供誘引販売取引につきましては、20日間
となります。注意点は、期間の初日換算といいまして、書面の交付を受けた日を1日目として換算いたします。
ですので、例えば本日、1月23日に書面の交付を受けた場合、1月30日が8日目ということになります。覚え方は、月曜日に交付を受けたなら次週の月曜日までが、その期間と覚えてください。
また、いくら申し込みをしたからと言って、書面を交付されていなかった場合や、書面に不備がある場合(法定の絶対記載事項を記載していないなど)は、クーリングオフ期間は進行しませんので、よくよくお調べください。
3.クーリングオフのやり方
クーリングオフ(申し込みの撤回等)の意思表示は、必ず書面によって行います。「ハガキ」若しくは、「内容証明郵便」などで発するとより安心です。
「電話」や「口頭」でも認められる判決も出ているようですが、後日の証拠を残すという意味であったり、業者が無視をした場合などで後日の証拠能力という面では、必ず書面で行いましょう。
クーリングオフの効果は、いつ発生するか?に関してですが、その意思表示の効果は、お客さんが「解除します」という書面を発したときに生じます。(発信主義)
例え、8日以内に業者に到達をしていなくても、郵便局の消印が上記に言う、次の月曜日以内であれば、その意思表示は有効となります。
クーリングオフに際し記載すべき事項
クーリングオフの書面に記載すべき事項を下記に記します。
- どの法令の何の条文に基づいて解除権の行使をするのか?
- 契約当事者の特定
- 契約内容の特定
- 解除意思の明記
- 解除日
4.クーリングオフができない場合
クーリングオフができない主な場合は、下記の通りとなります。
- クーリングオフ期間の8日を経過した場合
- 営業若しくは事業として契約をした場合
- 保険契約においては、1年以下の契約の場合
- 保険契約においては、既に保険金の支払い事由が発生している場合
- 不動産取引で、専任の宅建取引士を置く事務所において買受の申込を受けた場合
- 不動産取引で、売主が既に物件を引き渡し、かつ買主が代金を全額支払った場合
不動産の取引においては、買受の申込を、レストランや喫茶店・ホテルのロビーで行った場合は、クーリングオフの対象となります。
また、買主の指示により、買主の自宅や勤務先で買受の申込を受けた場合は、クーリングオフの対象外ですが、売主の指示により買主の自宅や勤務先で買受の申込を受けた場合は、クーリングオフの対象となります。
5.クーリングオフの効果
クーリングオフの申込を受けた業者は、解除により契約関係は「なかった」ことになりますから、業者が受け取っていた、販売代金や手付金、保険料などは返還しなければなりません。
返還に係る手数料等も業者の負担となります。
クーリングオフによって契約解除された場合は、損害賠償請求や違約金の請求などもすることができません。
クーリングオフ制度の規定に反するような申込者に不利な特約は無効となります。
そして、業者に不当な行為等があった場合、情状に応じ、指示処分や業務停止処分等の対象となります。
6.業者に課せられた義務
特定商取引法では、事業者に対して、消費者への適正な情報提供等の観点から、各取引類型の特性に応じて、以下のような規制を行っています。特定商取引法の違反行為は、業務改善の指示や業務停止命令・業務禁止命令の行政処分、または罰則の対象となります。
- 氏名等の明示の義務付け
特定商取引法は、事業者に対して、勧誘開始前に事業者名や勧誘目的であることなどを消費者に告げるように義務付けています。 - 不当な勧誘行為の禁止
特定商取引法は、価格・支払い条件等についての不実告知(虚偽の説明)又は故意に告知しないことを禁止したり、消費者を威迫して困惑させたりする勧誘行為を禁止しています。 - 広告規制
特定商取引法は、事業者が広告をする際には、重要事項を表示することを義務付け、また、虚偽・誇大な広告を禁止しています。 - 書面交付義務
特定商取引法は、契約締結時等に、重要事項を記載した書面を交付することを事業者に義務付けています。
ご自身が受けた勧誘が、上記義務に照らし、著しく不当な勧誘であった場合、消費者センターなどの消費者団体等を通して、行政処分を求める措置を検討することもできます。
最後に、クーリングオフに係る「内容証明郵便」などの送付は、行政書士でも可能です。お困りな方は、一度相談ください。








