自分が亡き後に妻の居住用不動産を確保したい場合に新制度として「配偶者居住権」と「持戻し免除の制度」について先日触れさせていただきました。
自分が亡き後に妻の居住用不動産を確保したい場合に新制度として「配偶者居住権」と「持戻し免除の制度」について先日触れさせていただきました。
ご覧になっていない方は、配偶者居住権と持戻し免除の制度ご覧下さい。
民法は、各々の事情如何に関わらず画一的に遺留分を認めており、配偶者と実子が実の親子であればそんなにも問題とはならないのではないかと一応は想定できますが、相続人が、配偶者と前婚の際の実子といった場合、中には父親の再婚相手を疎ましく思っているケースというのがあります。
通常通り、妻と実子による遺産分割協議により遺産を分割した場合、妻の居住権が脅かされることが想定され、妻が今住んでいる住宅を追い出されたり、実子の持分に従い賃料を請求されたりということを心配される方もいらっしゃいます。
実際には、家を追い出すことは法律上無理だとしても、賃料という問題はありうる話しではあります。
ではそんな不安を解決するためには、どうすればよいでしょうか?
「公正証書遺言」を作成し、遺言の中で居住不動産の承継を指定すればよいのでしょうか?
とはいえ、法律の定めで遺産の4分の1までは、遺留分が保証されており、遺産の内訳がほとんど不動産のみといった場合では、場合によっては不動産を手放さなければならないことも考えられます。
目次
贈与税の配偶者控除
1.持戻し免除の制度
前回も触れましたが、新民法において「持戻し免除」という制度が現在始まっています。
民法903条4項 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
つまり、夫から妻に対してその居住用不動産を「生前贈与」していた場合、夫の意思としては、居住用不動産を妻に特定承継させる意思があり、相続開始時にその「生前贈与」を特別受益として相続財産に持ち戻す意思がないものと推定します。
簡単に言うと、居住用不動産を相続財産から分離し、妻の固有財産とし、残った預貯金などの財産のみを遺産分割対象の財産とすることができます。
2.夫婦間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
加えて、上記の様な「配偶者への居住不動産の生前贈与」については、贈与税の配偶者控除の適用があり、贈与税は通常、110万円が基礎控除となり110万円を超えた部分に対し課税対象となりますが、上乗せで2,000万円の控除となります。
贈与不動産が2,110万円以下の場合、贈与税はかかりません。
ただし、この贈与税の配偶者控除は次の要件を充たしていなくてはならず、かつ人生において一回のみ使える制度となります。
- 夫婦の婚姻期間が20年過ぎた後の贈与又は遺贈であること
- 配偶者からの贈与財産が居住用の不動産であること
- 贈与を受けた翌年の3月15日までに現実に居住をし、その後も引き続き居住を続ける見込みであること
具体的にこの制度を使用した場合の効果は、次の通りとなります。
夫の相続財産が、2,000万円の不動産と2,000万円の預貯金で計4,000万円が相続財産のケース
通常の遺産分割協議を行った場合、実子の遺留分は、4分の1の1,000万円となります。
不動産を生前贈与し、不動産を相続財産から分離していた場合、遺留分は預貯金の2,000万円の4分の1の500万円となります。
つまり、妻にとっては不動産についても妻の固有財産となり、預貯金の取り分も増えることになります。
3.「生前贈与」をした場合の費用
ただし、生前贈与をした場合、贈与税に関しましては、配偶者控除の対象となりますので、非常に負担が下がりますが、次の費用はかかってしまいます。
登録免許税
所有権を移転した場合の税金で、固定資産税評価証明書記載の不動産価格の2%
不動産取得税
建物については、固定資産税評価証明書記載の価格
土地については、固定資産税評価証明書記載価格の2分の1
上記の建物と土地を合算した価格の3%
費用は、通常の相続に比べ多少かかってしまいますが、その後の効果を考慮するとメリットの方が多い制度となります。
4.実務上の手続きについて
では、上記の方法を達成するために具体的に必要な手続きはどうすれば良いかについて書きたいと思います。
- 夫と妻の間で居住用不動産を贈与する旨の贈与契約をする。口頭によるものでも一応は効力はありますが、書面により作成することをお勧めします。その後の登記実務においても贈与契約書の添付を求められます。
- 「贈与」を原因とした所有権移転登記
- 夫婦間で居住用不動産を贈与したときの配偶者控除適用のための税務申告
- 残財産についての「公正証書遺言」の作成
勿論、ご自身で一連の手続きをすることも可能ではありますが、必要書類等の収集や専門的な知見を要する書類作成などを考えるとプロにご相談いただいた方が良いかと思います。
4番目の「遺言」を作成する意義は、万一「遺言」がない場合、妻は、前婚の実子と顔を突き合わせ、「遺産分割協議」を取りまとめなくてはならず、その際に実子の協力が必要となります。(遺産分割協議書に実印を押してもらう。印鑑登録証明書を取り付けてもらうなど)
疎ましく思われている相手との交渉は、非常につらいものとなることが想像できます。
このようなお悩みをお持ちの方は、ご相談いただければと思います。









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