40年以上会社を経営する某建設業のお客様から代表取締役社長の退任と次世代への社長交代のお話しがありました。
このお客さんは、建設業の経営事項審査や入札資格審査等でお世話になっているお客様です。70代である社長が家族経営会社の子供世代に事業継承といった流れになります。
さて、建設業の許可の要件として経営業務の管理責任者と専任技術者が備わっていなければ許可を維持することができませんが、この会社の管理責任者・専任技術者とも退任される社長をもって許可をいただいている会社になります。
当然ながら、退任に伴い、新たな経営業務の管理責任者と専任技術者へと変更の手続きをしなくてはなりません。
これは、建設業法の第11条4項に定めがあります。
4 許可に係る建設業者は、営業所に置く第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者として証明された者が当該営業所に置かれなくなつた場合又は同号ハに該当しなくなつた場合において、これに代わるべき者があるときは、国土交通省令の定めるところにより、二週間以内に、その者について、第六条第一項第五号に掲げる書面を国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければならない。
そしてこの変更手続きを怠ったりした場合は、実は罰則があるのでご注意ください。
建設業法50条2項
第五十条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
二 第十一条第一項から第四項まで(第十七条において準用する場合を含む。)の規定による書類を提出せず、又は虚偽の記載をしてこれを提出した者
幸いなことにこの会社には、取締役として10年以上登記されているご長男さんの存在があり、ご長男さんが経営業務の管理責任者となることですんなりと承継ができ、すべてがうまく運ぶのですが、なんとご長男さんは、社長にはなりたくないとのことでした。
代わりに長女さんが、社長となるとのことでした。ただし、長女さんは今までは、取締役ではなく、監査役として会社にかかわり、建設業の実務の経験もないとのことで、これから経験を積んで経営業務の管理責任者を目指したいとのお話でした。
そして、長男さんは監査役に就任する予定とのことでした。
さてここで問題が出てきます。株式会社の監査役の地位は、経営経験とはみなされません。つまり、長女さんでは、経験がないため経営業務の管理責任者にはなれません。
更に長男さんが平の取締役のままであれば社長=長女、経営業務の管理責任者=長男ということも可能ですが、監査役に就任した場合、経営業務の管理責任者とはなれませんので、これまた要件を充たさなくなってしまいます。
で、今回の手続きを進めるうえで、何がネックになっているのか?というと次の事につきます。
会社法施行前の株式会社
さて、冒頭でも触れたようにこの会社は、40年以上の歴史があります。定款を確認させていただくと、この会社の機関設計は、取締役会設置会社であり、監査役設置会社となります。取締役会を設置するには、最低3名以上の取締役が必要となります。
何が言いたいかと言いますと、会社法が施行される前の株式会社を設立しようとした場合、最低資本金は、1,000万円以上、取締役会設置が必要、監査役の設置が必要という条件が必要でした。
更に取締役会は、最低3か月に1回は開催の義務があり、様々な会社の決定事を取締役会にて決議しなくてはならないというものになります。
皆様、取締役会というと、半沢直樹のドラマのようなものを想像するかもしれません。
このお客さんの会社のように家族5人+従業者2名の計7名の会社で、社長と奥様が退任すると残りは5名になります。
にも関わらず、4名も役員で人数を割かなければならず、非常に意思決定が迂遠になってしまいます。
実は、会社設立が古い方はご存じでない方も多いようですが、会社法施行以来、株式会社の機関設計は、取締役1名以上で可能となっています。取締役会や監査役の設置も義務ではありません。非設置会社とすることが可能です。
よって少人数の会社でポジションを占める人を確保しなければならないという不合理を改善することができ、冒頭のお客様も取締役2名で、代表取締役=長女、取締役・経営業務の管理責任者=長男とすることで、すっきりとし、今後、会社の意思決定や決議がスピーディーに行えることが期待できます。
同じように古い決まりごとにとらわれている会社で、不合理な状態になっている場合は、機関設計や定款を見直すことも必要かと思います。
定款を変更するうえでの注意点
取締役会や監査役を廃止する場合、定款変更に該当するため株主総会の特別決議が必要となります。
また、定款変更に伴う、登記事項の変更に費用がかかります。(司法書士分野)
大掛かりな定款変更となり、例えば、
- 株式譲渡の制限に関する承認機関が取締役会となっていた場合、株主総会へと変更する必要
- 取締役が2名以上いた場合の代表取締役の選任方法
- 取締役の定員
- 他諸々の規定
などの大規模な変更が必要となります。
特に非公開会社で家族経営の会社様などは、今後の会社のことを考えると、このタイミングで変更しておくことは、非常に重要かと思われます。