目次
はじめに
「相続した実家をどうするか」——これは単なる不動産の活用方法ではなく、人生の大きな選択であり、感情と経済のバランスが問われる問いかけでもあります。
幼少期を過ごしたあの家、親との思い出が染み込んだ柱や、毎年咲いた庭の花。手放すには惜しく、でも維持には現実的な負担がある。売却か、賃貸か。どちらを選ぶべきなのか——多くの方が迷いながら決断に向き合います。
実家への想いと、手放すことへの葛藤
実家には物理的な価値以上に「感情の価値」が詰まっています。
両親と過ごした日々、兄弟喧嘩した階段、夏休みに蝉取りをした庭。それらの記憶は、家という空間の中に息づいています。
だからこそ、「売る」「貸す」といった言葉が、まるで思い出を損なうように感じてしまうのです。とくに親が亡くなった直後は、その空虚さと向き合うだけでも精一杯。冷静な判断ができないまま数年放置……というケースも少なくありません。
経済的な現実と維持コスト
感情に寄り添いたい一方で、不動産には冷静な数字が伴います。
住んでいなくても、固定資産税は毎年かかり、空き家対策法により近隣への影響も無視できません。
とくに築年数が古い家は、修繕費や火災保険料などの維持コストが想定以上にかかることも。
また、賃貸にする場合にはリフォームが必要だったり、賃借人との契約管理などの手間が発生します。そのため、「家が残っている=安心」ではなく、「維持できるかどうか」こそが問われるのです。
売却と賃貸、それぞれのメリット・デメリット
| 項目 | 売却 | 賃貸 |
| 感情的側面 | 手放すことで喪失感が生まれる | 家が残る安心感がある |
| 経済的利点 | 一括で資金化できる | 毎月の収入になる(定期的キャッシュフロー) |
| 管理の負担 | 売却後は不要 | 管理やメンテナンスが継続的に必要 |
| 節税の可能性 | 空き家特例などの税優遇あり | 所得として課税される可能性あり |
自分がどちらに重きを置くか、「感情」か「経済」かではなく、「どう両立させるか」が大切です。
選択する前に、考えるべきこと
– 家族で共有している「想い」の整理は済んでいるか?
– 誰が管理や手続きを担えるか?
– 財産として残すよりも、人生の次のステージへの転換として捉えられるか?
このような問いかけを経て、売却か賃貸かの意思決定に至ることで、後悔の少ない選択につながります。
最低限知っておくべき法的ステップ
1. 相続登記の義務化(2024年4月施行)
- 不動産の名義を変更する「相続登記」は義務に
- 相続開始から3年以内の登記が必要
- 登記せず放置すると10万円以下の過料が科される可能性あり
2. 遺産分割協議の整理
- 相続人全員による合意が必要
- 書面化(遺産分割協議書)し、押印をもらう
- 不動産の割合や使用権、売却後の分配方法も明記すると安心
3. 売却・賃貸時の法的書類
- 登記簿・固定資産税納税通知書・本人確認資料など
- 売却の場合は譲渡所得申告が必要
- 空き家特例(3,000万円控除)を受けるには一定条件の証明書も必要
4. 税理士・司法書士など専門家との連携
- 登記申請は司法書士に依頼するケースが多い
- 税務申告や特例の相談は税理士が安心
- 地方自治体や法務局で無料相談窓口も利用可能
空家特例とは?
空家特例は、相続した実家などの空き家を売却する際に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。節税効果が非常に大きいため、適用できるかどうかをしっかり確認する価値があります。
- 正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」
- 相続または遺贈で取得した空き家を、一定の条件を満たして売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる
✅ 適用要件(主なポイント)
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要件区分 |
内容 |
|---|---|
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建物の条件 |
昭和56年5月31日以前に建築された住宅で、区分所有建物でないこと |
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居住状況 |
相続開始直前に被相続人のみが居住していたこと(老人ホーム入居でも条件を満たせばOK) |
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利用状況 |
相続後、売却までの間に事業・貸付・居住に使われていないこと |
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売却期限 |
相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却すること |
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売却価格 |
1億円以下であること |
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耐震性 |
建物を残して売却する場合は、一定の耐震基準を満たすこと(または譲渡後に改修・取壊し) |
📉 控除額と注意点
- 控除額は最大3,000万円ですが、相続人が3人以上の場合は1人あたり2,000万円までに制限されます(令和6年以降の改正)
- 他の特例(取得費加算の特例など)とは併用不可なので注意が必要です
📄 必要書類(確定申告時)
- 被相続人居住用家屋等確認書(市区町村で発行)
- 耐震基準適合証明書(建物を残す場合)
- 売買契約書の写し
- 登記事項証明書(建物・土地)
おわりに
実家の処分は「モノ」との別れではなく、「記憶」との対話です。
どちらの選択も、人生を前に進める一歩として意義あるもの。大切なのは、心の整理と現実的な対応を、時間をかけて行うこと。
もし迷っている方がいるなら、このブログが少しでも参考になればと願いながら、筆を置きます。





