共同不法行為と不真正連帯債務

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車同士の事故画像

不法行為について意外と皆様が興味を持っていることがわかりましたので、不法行為について掘り下げて記事を書きたいと思います。

共同不法行為とは、損害の加害行為に複数の加害者が絡んだ結果として損害を被った場合のことを言います。

よくある事例としましては、交通事故の玉突き事故や、交差点で右折車と直進車の追突事故から派生して通行人が怪我を負ったケース。或いは、集団に暴行を加えられ怪我を負ったケースなどが考えられます。

民法においては次の条文で規定されています。

第七百十九条(共同不法行為者の責任) 
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2 行為者を教唆した者及びほう助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。

不真正連帯債務

ここでの重要論点は、加害者が複数いる場合は、連帯して賠償しなければならないという点です。

この条文では何を重視しているかということですが、「被害者の救済」を最も重視している規定となります。

本来玉突き事故であれば、最後部の自動車が、減速もせず突っ込んできて次々と前の車に衝突波及し、最前列の車に最も大きな被害があったとすれば、恐らく最後部の自動車の過失割合としては、9割程度になり、その前の車になればなるほど過失割合が少なくなるはずです。

また、交差点の右折車A直進車Bの事故であれば、右折車Aの過失が8割、直進車Bが2割くらいで個々の状況によって過失割合を修正をしていくと思います。

ただ、交差点事故に巻き込まれた通行人としては、待ったなしの怪我を負っていて、双方の過失割合が決まるのを待って過失分に応じて請求することはナンセンスです。

場合によっては、右折加害車Aが無資力で、直進加害車の運転手Bに2割だけしか賠償してもらえないとなっては、迂遠ですし、被害者だけが損をすることになります。

そこで、共同不法行為の規定といたしましては、被害者は加害行為をした全員各々に対して、損害額の全額を請求することができます。

これを、「不真正連帯債務」といいます。

上の交差点の事故の例で言えば、2割の過失しかないBに対し損害額の全額を請求することができます。

法の目的が、被害者救済ですから、AとBの費用負担の調整は、被害者の関与しないところで決着をつけてもらえばよい訳です。


また、条文にあるように共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときとは、集団暴行を受けたケースで、集団の中の誰の一撃での怪我なのかを証明することができないときなどで、その場合も集団暴行者全員が不真正連帯債務を負うこととなります。

条文の2項に記載のある、教唆(“きょうさ”と読みます)幇助(“ほうじょ”と読みます)した者も共同不法行為者として連帯債務を負うことを規定しています。

教唆とは・・・

上記の集団暴行の件で言いますと、自分では手を下していないが、集団に対し暴行をするようにそそのかした者を言います。

幇助とは・・・

上記の集団暴行の件で言いますと、加害行為のために武器を集団暴行者に提供した者などを言います。

では、本来は他の加害者側にも過失割合があり、不真正連帯債務のため、他の加害者の責任割合を含めて全額賠償をした加害者は、他の加害者の責任を追及できないのでしょうか?

答えは、「ノー」です。他の加害者の責任分含め賠償したのであれば、他の加害者の過失割合に応じて賠償額を求償することができます。

上の事故例であれば、相手方の過失割合80%分をAに求償することができます。

会社のために車両を運行する者の場合

会社のために車両を運行する者Xによる過失事故の場合、その使用者である会社Yにも「監督責任」を理由とした不法行為責任が発生します。

その場合被害者は、直接の加害者であるX使用者であるYに対し、不真正連帯債務を理由に全額の損害賠償請求ができます。

次の様な事故の場合は、加害者の負担割合はどのようになると思いますでしょうか?

株式会社Zに雇用され、タンクローリーを運転するAの前方不注意とバス会社Xに雇用されバスを運転するBのよそ見が競合し、衝突事故が起こりバスの乗客であるCが大けがを負いました。怪我の治療費に100万円を要し、事故の過失割合は、Aが40%Bが60%だったとします。

バス会社Xは、乗客Cのために怪我の治療費の全額100万円を賠償いたしました。バス会社Xは誰にどれだけ求償することができるでしょうか?

  1. 運転者Aに対して60万円を請求できる
  2. 相手方運転手Bに対して60万円を請求できる
  3. 相手方株式会社Zに対して60万円を請求できる。

なんか行政書士試験に出てきそうな問題ですね!!

答えは、2と3になります。相手方の運転手Bも株式会社Zも事故の当事者といたしましては一体をなすものとみなされます。ですので、損害賠償を負担したバス会社Xとしては、どちらに求償してもよい事となります。

1に関しましては、運転者A重大な過失があり、かつバス会社Xが、監督義務を怠っていなかったことを証明できた場合は、求償することができますが、ただし、求償額は、運転者Aの過失分40%である40万円となります。残りの60万円は、やはりBかZに求償することになります。

不法行為の消滅時効改正

不法行為の消滅時効が民法改正によって変わっていますのでご注意ください。

新民法は、下記となります。

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条 
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
 
(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条の二 
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
 
大きな変更点は、724条の2「人の生命又は身体を害する期間追加されたことと不法行為の時から20年間が、除斥期間ではなく、消滅時効とされたことです。
 
不法行為の時効の起算点の考え方は、「主観的起算点」と「客観的起算点」があります。
 
主観的起算点

被害者又はその法定代理人(親権者や成年後見人等)が損害加害者双方を知ったときから進行します。知ってなお三年間(生命・身体を害する重大な損害は五年)、損害賠償請求権を行使しなかった場合、時効によって消滅します。

つまり、損害や加害者を知らないまま時が経過した場合は、時効は進行せず、知ったときから進行します。

客観的起算点

上記のように損害や加害者を知らないまま時が経過したとしても、不法行為の時から20年間経過してしまえば、こちらも権利が消滅することっとなります。

20年の時の経過は、証拠を立証するにも困難が伴いますよね!

ただし、従来の20年間は除斥期間とされており、20年間は、時効の中断停止もできず、20年の経過とともに当然に消滅するものとされていました。

改正後は、消滅時効となりましたので、途中で時効の進行を中断したり、停止したりすることができるようになります。


今回は交通事故のような例を挙げましたが、過去に自宅の門扉を近所の子供2人のいたずらによって壊され、子供の親権者に対し、損害賠償を請求したが、親同士がどちらが加害行為をしたかでもめた結果、なかなか賠償をしてもらえないという実際にあった事件を思い出しました。

子供の親権者が顔見知りであれば大事にしたくない気持ちもありますが、法律上は、不真正連帯債務ですので、賠償資力のある方に全額賠償してもらい、後の決着は被害者の知らないところで決着をつけてもらえばよい事になります。

以上、共同不法行為についてでした。

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