共有土地の賃借

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ユキマサくん

お客様である法人のAさんから相談がありました。会社の資材置場として手頃な土地を探していたところ、少し郊外にはなってしまいますが手頃な土地を見つけたため、その土地を会社の資材置場とする利用目的で一時的に借りたいとのことです。その土地の現状は、地目が宅地で更地となっており、雨風を防げる程度の仮設建物を建て、一部業務用の貨物車なども置きたいとの事でした。

早速、この土地を借り受けるべく土地の所有者を調べることとしました。

ところが土地の所有者を調べると、所有者はB氏とC氏の共有の土地となっており、親交があるBさんに賃貸の意思表示をしたところ快く承諾をいただきましたが、C氏とは、親交がなく意思表示をしても一向に返事がありません。ちなみにこの土地は、BさんとCさんの持ち分はBさん2/3Cさん1/3づつとなっております。

そうこうするうちに、資材の確保が現実的に支障をきたしてきたため一刻も早く賃借をしたいと考えています。果たしてAさんは、この土地につき有効な借地契約を締結することができるのでしょうか?との相談です。

民法上の共有物の取り扱い

 民法は、共有物全部の取扱いについて、各共有者がその持分に応じた使用をすることができるとしています。

(民法249条)各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

各共有者の持分は相等しいものと推定するとしています

(同法250条)各共有者の持分は、相等しいものと推定する。

共有物の取扱いのうち、保存行為各共有者単独ですることができますが、共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従いその過半数で決することとし(同法252条)、共有物に変更を加えるには共有者全員の同意を得なければならないとしています(同法251条)。

(同法525条)共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

 

(同法251条)各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。


共有土地について、保存行為とは地盤を修補したり不法占有者に対し明渡請求をしたりするような財産の価値を維持するために必要な行為をいいます。

管理行為とは共有土地の賃貸借契約の解除や地目の変更を伴わない整地など目的物又は権利の性質を変えない範囲で利用したり改良したりする行為をいいます。

変更行為(処分行為)とは土地を造成したり土地上に建物を建てたりする行為や、売却や担保権を設定するといった目的物に物理的、法律的変化をもたらす行為をいいます。

以上は共有土地全体の取扱いの問題で、共有者の1人が自己の共有持分だけを第三者に売却するといった自己の持分のみの処分は当然に単独で行うことができます。

 

以上を簡単にまとめますと、変更行為(処分行為)は、共有関係に変化があり、他方の共有者の自己の使用収益する権利が害されるわけですから、共有者全員の同意が必要となり、軽微な利用・改良については、持ち分に応じ過半数の同意が必要となり、単なる保存行為は単独でできます。

つまり、共有土地をどのように扱うかで、BさんとCさん双方の同意が必要なのか、或いはBさんのみの意思だけで良いのかが変わってきます。

共有土地の貸付

共有土地の貸付については、これが共有者全員の同意を要する変更行為に当たるか持分権の過半数の共有者のみの同意で足りる管理行為に当たるかが問題となります。

冒頭のお客様の共有土地の賃借案件は、変更行為なのか管理行為なのかということになります。もちろん共有者全員(BさんCさん)の同意が取れればどちらにしても問題はないのですが、冒頭の件は、法律上の契約が生じるという点で変更行為になるかとは思います。

この問題について次のような裁判事例があります。


⑴  Dが土地の10分の6の持分を有するEから、他の共有者の同意を得ずに当該土地の使用貸借契約を締結したという事案で、当該契約の効力が争われた事案において、裁判所はDとEとの間で締結された本件使用貸借契約は、返還時期の定めがないうえ、本件建物の敷地として本件土地を使用するにとどまらず、本件建物を解体撤去して新たに建築する建物の敷地として本件土地を使用する目的を含むものであり、しかも、Dが新築を予定しているのは鉄骨鉄筋コンクリート造の堅固な建物であるから、民法602条2号所定の5年を優に越える相当長期間にわたり存続使用させる結果となること、加えて使用貸借であるから、賃貸借と異なり対価なく無償で使用させるものであること等の事情を考慮すると、DとEとの間の本件使用貸借契約の締結は、Eの他の共有者の本件土地に対する使用収益権能を著しく制限するものであって、共有物である本件土地の処分行為に当たり共有者の全員の同意を要するところ、本件土地の共有者に同意していない者があるから本件使用貸借契約は無効であると判示しました(東京地裁平成18年1月26日判決)。

 

⑵  建物の4分の1の持分を有するFが、同建物の一部を店舗等として使用するGに対し、正当な権原なく占有していると主張したのに対し、Gは当該建物の4分の3の持分を有するHとの間で賃貸借契約を締結したものであるから、占有権原を有すると主張した事案において、裁判所は存続期間が民法602条の期間を超えない賃貸借契約であったとしても、借地借家法が適用される賃貸借契約においては、更新が原則とされ事実上契約関係が長期間にわたって継続する蓋然性が高く、したがって、共有者による使用、収益に及ぼす影響は、同条の期間を超える賃貸借契約と同視できるとし、借地借家法等の適用がある賃貸借契約の締結も、原則として共有者全員の合意なくしては有効に行い得ないとしたうえで、持分権の過半数によって決することが不相当とはいえない事情がある場合には長期間の賃貸借契約締結でも例外的に管理行為に当たるとし、GとHとの本件建物賃貸借はテナントに賃貸するという本来予定された使用収益方法の範囲内にあり共有権の行使態様を何ら変更していないことを認め、Hは本件建物につき4分の3の持分権を有しているから本件賃貸借契約は有効に締結されており、Gは適法に本件建物を占有していると判示しました(東京地裁平成14年11月25日判決)。

因みに、裁判例にある民法602条とは次になります。

(民法602条)処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、当該各号に定める期間とする。

二 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 五年

共有者の同意のない者の賃貸借=処分の権限を有しない者の賃貸借なので、5年を超えて設めることはできません。

有効契約の可否

以上の判例(1)と(2)から導き出されるポイントは以下になるかと思います。

  • 土地の利用目的や現在の土地の態様、契約の内容、賃貸借の期間の長さ等によってCの本件土地に対する使用収益を著しく制限する場合、賃貸借契約は無効
  • もともと共有地につき共有者の自己使用が予定されておらず、専ら第三者へ賃貸しその賃料収入を共有者間で分かち合う以外の使用方法を予定していないなどの持分権の過半数によって決する事が不相当とはいえない事情がある場合、例外的に管理行為に当たり、適法

上記に照らし合わせると、本件詳細は次の通りとなります。

  • 土地の利用目的は、居住目的の建物新築を伴わない(借地借家法の適用を受けない)資材置き場
  • 現状の土地の態様は、共有者の自己使用が予定されていない更地
  • 民法602条2項の5年以内の賃貸期間
  • 共有者間でも土地の使用方法の予定がない

本件の結論としましては、Aさんのお気持ちはよくわかりますが変更行為にあたるため共有者の同意は必要となるかと思います。ですので、先ずは粘り強くCさんの同意を得るべくAさんに伝えました。仮にCさんから返事がいただけなくても民法602条2項以内の賃貸借期間を超えない契約を締結をすべきとのお話をいたしました。

 

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