コロナの影響もなかなか鎮まらずに新年度の4月を迎えることとなりました。
3月は、卒業シーズンでコロナの中、修学旅行が延期され卒業間際に旅行だったはずが、緊急事態宣言のため結局中止になってしまったなどの話も聞きます。
そのような経験をされた方は、非常に残念だったとお察しします。コロナ禍が過ぎ去ったときには、是非旅行に行ってください。
さて先日、YOUTUBEで面白い映像を見ました。かなり以前のものではありますが、内容は、大阪市の卒業式での国歌起立斉唱についてのもので、当時の市長の橋本徹さんが新聞記者の囲み会見で毎日新聞の女性記者との間で押し問答をするという内容のものです。
この記者会見に関連する事のあらましを新聞記事から抜粋すると下記の通りとなります。
目次
大阪府教員国歌斉唱拒否事件
大阪府立支援学校の卒業式で、国歌斉唱の際に起立しなかったことなどを理由に減給処分を受けた教諭が9月24日、府を相手取り、処分の取消と慰謝料200万円を求める訴訟を起こした。訴状などによると、原告は昨春の卒業式で国歌斉唱時に起立せず府教委から戒告処分を受けていたが、今春も同様に起立しなかったところ、前年の不起立も考慮して減給10分の1(1カ月)の懲戒処分を受けた。(MSN産経westより 2013/09/24)
国歌斉唱について大阪府は、橋下徹大阪市長が府知事だった2011年に、公立校の教職員に君が代の起立斉唱と日の丸掲揚を義務づける条例を制定している。
条例名は「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例」。府内の公立小中高校などの学校行事で君が代を斉唱する際、「教職員は起立により斉唱を行うものとする」とした。府立学校など府の施設での日の丸の掲揚も義務化した。(朝日新聞デジタルより 2011/06/04)
大阪府は条例制定後、国歌斉唱をしなかった教員に対して戒告処分を複数行っているほか、9月19日には条例の徹底を図るため、すべての教員が歌っているかどうか、口元をチェックするよう通達を出すなど、厳しく取り締まる方針を打ち出している。
大阪府の松井知事は記者団に対し、「教育公務員として規則にのっとった行動を取るのは当然だ。そのチェックは教育委員会の役割であり、しっかりやってもらいたい。起立斉唱を指導する立場の教員が、それをやらなかったら子どもたちが『そういうことが大人の社会で、ルールは破るためにある』と思ってしまう。こういう条例は、本当は無いほうがいいが、それだと指導してもやらない教員が出てしまうことが一番の問題だ」と述べました。(NHKニュースより 2013/09/19)
これに対し、教員組合は「人権侵害だ」として抗議。冒頭の訴訟も含めて、教員側と行政側が真っ向から対立する構図となっている。
大阪府立高等学校教職員組合(府高教)は19日、府教育委員会が全府立学校に対し、教職員が入学式や卒業式で国歌を斉唱しているかを管理職が目視で確認するよう通知したことに対し「あってはならない人権侵害だ」と抗議し、撤回を求める要請書を中原徹教育長宛てに提出した。(西日本新聞より 2013/09/19)
という内容になります。ただ、上記のNHKの記事では、口元をチェックするよう通達と言っていますが、橋下さんのお話によると実際は、教育委員会が校長先生に裁量権を与え、校長の裁量のもと、口元チェックを行ったようです。
さて、原告である先生方は、条例によって定められた規定や教育委員長からの職務命令があるにもかかわらず、国歌斉唱を拒否し「人権侵害」を理由に国歌斉唱を拒否しています。人権侵害を掲げるその根拠は何なのでしょうか?
先生方は、日本国憲法第19条の思想良心の自由を根拠に「人権侵害」と言っているわけです。
日本国憲法
第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
はたしてこの事件に関する大阪市の懲戒処分は、日本国憲法に反し、違法な行為となるのでしょうか?
東京都国歌斉唱行為の拒否事件
この事件の先例として、東京都においても同じような事件が起こっており、平成23年5月30日に最高裁判所による判決があります。
事件のあらましは、次の通りとなります。
都立高等学校の教諭であったXは、卒業式における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命ずる旨の校長の職務命令に従わず、国歌斉唱の際に起立をしなかった。その後、定年退職に先立ち申し込んだ非常勤の嘱託員及び常時勤務を要する職または短時間勤務の職の採用選考において、東京都教育委員会から、上記不起立行為が職務命令違反等に当たることを理由に不合格とされた。
Xは、職務命令は憲法19条に違反し、また、不合格としたことは違法であるとして、国家賠償を求める訴訟を提起した。
以上の様な事件になります。
この事件に関する最高裁判所の判決文は、下記の通りとなります
上告人は,卒業式における国歌斉唱の際の起立斉唱行為を拒否する理由について,日本の侵略戦争の歴史を学ぶ在日朝鮮人,在日中国人の生徒に対し,「日の丸」や「君が代」を卒業式に組み入れて強制することは,教師としての良心が許さないという考えを有している旨主張する。このような考えは,「日の丸」や「君が代」が戦前の軍国主義等との関係で一定の役割を果たしたとする上告人自身の歴史観ないし世界観から生ずる社会生活上ないし教育上の信念等ということができる。~中略
これを本件についてみるに,本件職務命令に係る起立斉唱行為は,前記のとおり,上告人の歴史観ないし世界観との関係で否定的な評価の対象となるものに対する敬意の表明の要素を含むものであることから,そのような敬意の表明には応じ難いと考える上告人にとって,その歴史観ないし世界観に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行為となるものである。この点に照らすと,本件職務命令は,一般的,客観的な見地からは式典における慣例上の儀礼的な所作とされる行為を求めるものであり,それが結果として上記の要素との関係においてその歴史観ないし世界観に由来する行動との相違を生じさせることとなるという点で,その限りで上告人の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があるものということができる。
他方,学校の卒業式や入学式等という教育上の特に重要な節目となる儀式的行事においては,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図ることが必要であるといえる。
法令等においても,学校教育法は,高等学校教育の目標として国家の現状と伝統についての正しい理解と国際協調の精神の涵養を掲げ(同法42条1号,36条1号,18条2号),同法43条及び学校教育法施行規則57条の2の規定に基づき高等学校教育の内容及び方法に関する全国的な大綱的基準として定められた高等学校学習指導要領も,学校の儀式的行事の意義を踏まえて国旗国歌条項を定めているところであり,また,国旗及び国歌に関する法律は,従来の慣習を法文化して,国旗は日章旗(「日の丸」)とし,国歌は「君が代」とする旨を定めている。
そして,住民全体の奉仕者として法令等及び上司の職務上の命令に従って職務を遂行すべきこととされる地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性(憲法15条2項,地方公務員法30条,32条)に鑑み,公立高等学校の教諭である上告人は,法令等及び職務上の命令に従わなければならない立場にあるところ,地方公務員法に基づき,高等学校学習指導要領に沿った式典の実施の指針を示した本件通達を踏まえて,その勤務する当該学校の校長から学校行事である卒業式に関して本件職務命令を受けたものである。これらの点に照らすと,本件職務命令は,公立高等学校の教諭である上告人に対して当該学校の卒業式という式典における慣例上の儀礼的な所作として国歌斉唱の際の起立斉唱行為を求めることを内容とするものであって,高等学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿い,かつ,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえた上で,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに当該式典の円滑な進行を図るものであるということができる。
以上の諸事情を踏まえると,本件職務命令については,前記のように外部的行動の制限を介して上告人の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面はあるものの,職務命令の目的及び内容並びに上記の制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に較量すれば,上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるものというべきである。以上の諸点に鑑みると,本件職務命令は,上告人の思想及び良心の自由を侵すものとして憲法19条に違反するとはいえないと解するのが相当である。
結論として、卒業式における国家起立斉唱行為を命ずる職務命令は憲法19条に違反しないとの判決になります。
その根拠として、憲法で保障される思想・良心の自由は、最大限保障されるべきではあるが判例にあるように直接制約される訳ではなく間接的に制約される教員の思想・良心と、職務命令の目的である教育上の行事にふさわしい秩序確保と式典の円滑な進行を比較衡量すれば、教師の制約も許容しえる程度の必要性と合理性が認められるということになります。
公務員の職務の公共性
加えて、公立高等学校の教員は、身分と立場は、地方公務員になります。公務員には、同じ日本国憲法の15条2項においては職務の公共性が求められています。
日本国憲法15条
② すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
地方公務員法においても公務員の服務規程については次のように定められています。
(服務の根本基準)第三十条 すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。 (服務の宣誓)第三十一条 職員は、条例の定めるところにより、服務の宣誓をしなければならない。 (法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)第三十二条 職員は、その職務を遂行するに当つて、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。









