台風の爪痕と民法717条「土地の工作物等責任」「公の営造物の管理」

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信州の山の画像

昨日は、首都圏を直撃した大型台風のため皆様大変な思いをされた方が多いかと思います。

かくゆう僕も総武線が動いていなかったのと、14時にお客さんとアポがあったため車での移動を余儀なくされ、大渋滞もあり難儀な思いをいたしました。

皆様もTVのニュースなどでご覧になったかとは思いますが、千葉県市原市のゴルフ練習場の支柱が折れ、近隣の住宅10棟近くに損壊の被害があった映像があったかと思います。

非常にショッキングで、自然の力の猛威を痛感させられた場面であったかと思われます。


Ⅰ.災害被害の責任の所在

ところでこの近隣住宅の家屋損壊の被害の責任は?ということに大きな興味を持たれることかと思います。

一体だれが責任を取るのか?

地震と同じように自然がなすことですので、責任追及の主体がないように思われます。

責任の所在について、基本的には災害のなせる仕業ですからゴルフ練習場に責任追及をするのは難しいと思います。

但し、民法717条には、「土地の工作物等の占有者及び所有者の責任」の規定があります。

条文は以下のように定めています。

「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない」

まず「土地の工作物」とは、今回ですとゴルフ練習場の支柱やらネットやらの建物他付随の施設をいいます。

保存とは、常に安全な状態を保つよう措置を講ずることをいいます。

瑕疵とは、そこに欠陥や過失(ミス)を言い、占有者は、実際にその施設を使用・管理しているものを言います。所有者は、もちろん占有者とイコールのことが多いですが、いわゆるオーナーを指します。

つまり今回のケースで言いますと、占有者である「ゴルフ練習場」が、風速50mの強風にも耐えうる施設を設置し、常日頃安全の維持に注意を怠っていなかったこと、また想定外や現有技術水準以上の災害がために損害の発生を回避することができなかったとしても、「損害の発生の防止」のために必要な措置をとっていたことを占有者が証明できれば、責任はございません。

その場合、所有者は無過失責任といいまして、ほぼ全面的に責任を負わなければならない旨を規定しています。

ただし、道に転がっている石が飛んできて損害を被ったや、山の倒木やら川の氾濫によって損害を受けた等、私人には到底責任を追及できない場合も多いです。

Ⅱ.施設の所有者が国や自治体であった場合「公の営造物の施設管理の瑕疵に基づく損害賠償責任」

では、今回のゴルフ練習場が国や地方公共団体の施設であった場合はどうでしょうか?

国や地方公共団体が所有・管理する施設のことを「公の営造物」といいます。

これも「国家賠償法」という法律の定めがございます。民法の不法行為法を修正する特別法になります。

国家賠償法の第2条に「公の営造物の施設管理の瑕疵に基づく損害賠償責任」があります。

「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体はこれを賠償する責に任ずる」

とあります。

国・公共団体の責任は、私人のそれよりも厳しく、公の営造物に「通常有すべき安全性が欠如している」だけで責任が問われることとなります。

管理者である国や地方公共団体に過失があったかどうかは不要です。

Ⅲ.高知落石事件

公の営造物の施設管理の瑕疵に基づく損害賠償責任に関する国家賠償の事件で有名な「高知落石事件」があります。

昭和45年最高裁判所判例で事案としては次の様な事案になります。

高知市方面と中村市方面を結ぶ国道56号線の一画において、従来しばしば落石があり、通行者は落石・崩土の危険に脅かされていた。これに対し、道路管理者は「落石注意」等の標識や竹竿に赤い布をつけ設置するなどの注意を促す処置を講じていた。そうする中、昭和38年6月13日に落石による事故でトラックの助手席に乗っていた16歳の青年が即死する事故が起き、その両親が道路管理者たる国に対し国家賠償法2条1項に基づき、管理費用の負担者たる高知県に対して3条1項に基づき、損害賠償を求めて提訴した

国・高知県側は、不可抗力を理由に責任がないこと、また事故防止のために防護柵等を設置することに関しては、財政的な理由から困難であったことを理由に争いました。

これに対し最高裁判所の判旨は下記の通りとなり、国と高知県の損害賠償責任を認めました。

営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく国および公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としないと解するを相当とする。

本件道路における防護柵を設置するとした場合、その費用の額が相当の多額にのぼり、予算措置に困却するであろうことは推察できるが、それにより直ちに道路の管理の瑕疵によって生じた損害に対する賠償責任を免れうるものと考えることは出来ない。

つまり、財政的な理由(予算不足)は、免責事由とはならないことを判示しています。

この国家賠償の公の営造物に関しましては、いろいろな判例がございますので、調べてみると面白いかと思います。

例えば、河川の堤防の決壊についてや、航空騒音の問題、道路上の放置車等様々なケースの判示があります。

以上、工作物責任についてでした。

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