今週は、不動産の宅地建物取引士の登録をするために、研修に参加してきました。
宅地建物取引士の登録をするには、まず、国家試験に合格しなければなりません。
その上で、原則不動産業に従事して2年以上の実務経験がなければ、登録をすることができません。
では、そもそも試験には合格したけれど、僕のように実務経験がない人はどうすればよいのか?という話になりますが、その場合、合格から1年以内に国土交通大臣が指定する実務講習を受講し、修了証を得て、その修了証を申請時に添付することで登録が可能となります。
目次
宅地建物取引士について
1.宅地建物取引士の役割
ところで、宅地建物取引業(不動産業)を営もうとする場合は、その会社の中に専任の「宅地建物取引士」を置かなければ、営業をすることができません。
また、多数の従業員を置く場合、会社の人数5人に対し、1人以上の宅地建物取引士を置かなければなりません。役員含め20人の従業者がいる場合は、4人の宅地建物取引士を置かなければならず、万一宅地建物取引士が一人かけてしまった場合は、補充をした上で、登録をしなければなりません。
では、「宅地建物取引士」の役割とは何なのか?主に次の3つになります。
- 法35条「重要事項説明書」の説明業務
- 法35条「重要事項説明書」への記名・押印
- 法37条「不動産契約書面」への記名・押印
不動産取引は、人生のうちでもとても高額な買い物となりますし、複雑な法令に制限されます。ですので法律の知識に長けた取引士の存在が必要となります。
2.法令による制限
不動産の利用は、様々な法令に制限されることとなります。
主な法令は、下記となります。
- 都市計画法
- 建築基準法
- 国土利用計画法(投機的な土地取引を抑制し土地の高騰を抑える)
- 宅地造成等規制法(がけ崩れや土砂流出の防止)
- 農地法
- その他、都市緑地法、生産緑地法、景観法、土地区画整理法、被災市街地復興特別法、土壌汚染対策法等多数
3.都市計画法
例えば、都市計画法においては、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることで、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、それによって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的としています。
都市計画の中では、区域区分制度を定め、市街化区域と市街化調整区域に区分をしています。
市街化区域とは・・・建物をどんどん建て、開発もどんどんやって欲しい地域で積極的に市街化を目指す地域となります。
市街化調整区域とは・・・市街化を抑えたい、農業や漁業をやって欲しい、自然環境を残しておきたい地域となります。
その他に非線引き都市計画区域ということで、どちらにも属さないグレーゾーン地域があります。
また、計画的な街づくりを実現するために都市計画の中で地域や地区を定め秩序ある街づくりをしています。
地域地区の種類
地域地区の種類は下記の通りとなります。
- 用途地域(13種類)
- 特別用途地区(用途地域を補完)
- 特定用途制限地域(用途地域が定められていない区域での用途制限)
- 特例容積率適用地区(容積率の融通を認める区域)
- 高層住居誘導地区(高層住居を積極的に誘導)
- その他の地域地区
更に、その他の地域地区の分類として
- 高度地区(建築物の高さを揃える)
- 高度利用地区(土地の有効利用)
- 特定街区(超高層ビル街誘致)
- 防火地域・準防火地域
- 景観地区
- 風致地区
- その他
用途地域を3系統13種類に分類しています。
| 1.住居系 | 低層住居専用地域(第1種・第2種) |
| 中高層住居専用地域(第1種・第2種) | |
| 住居地域(第1種・第2種・準・田園) | |
| 2.商業系 | 近隣商業地域 |
| 商業地域 | |
| 3.工業系 | 準工業地域 |
| 工業地域 | |
| 工業専用地域 |
例えば、工業専用地域に住宅を建てようとしても認められなかったり、低層住居専用地域に大型のショッピングセンターを計画しても認められません。土地の売買には、その目的を達成するのに、法令上認められない場合がありますので、制限が非常に重要となります。
4.建築基準法
その他に建築基準法には、国民の安全、健康、財産を守るために、地震や火災などに対する安全性や、建築物の敷地、周囲の環境などに関する必要な基準が定められています。
その基準を列記しますと下記となります。
- 地震、台風、積雪等に対する建築物の安全性の基準
- 火災による延焼、倒壊の防止、避難施設の設置等に関する火災時の安全性の基準
- 居室の採光、換気、排水施設、衛生設備等の環境衛生に関する基準
- 敷地が一定の幅員以上の道路に接することを求める基準
- 都市計画において定められた用途地域ごとに建築することができる建築物に関する基準
- 建築物の容積率、建蔽率、高さの制限、日影規制等に関する基準
5.農地法
また、登記簿上や事実上の農地に住宅を建てたり、構造物を建てようとする場合は、農地法の規制があり、農業委員会への届出や都道府県知事の許可が必要となります。
これは、農地は国民の食糧資源の源泉で政策上、保護を必要とするため規制があります。
とはいえ、農地は、宅地を購入するよりも安く買えたりしますので、依然、農地を転用して開発しようというニーズはとても多いです。ただし売買契約をしたとしても、将来的に地目変更ができなかった場合、購入の目的が達成できないことになりますので、事前に役所に確認することも必要となります。
以上にように、素人である一般消費者がすべての法令の制限を調べることは非常に困難でそこはやはりプロの力を借りることが必要となります。
その一端を担うのが、「宅地建物取引士」の仕事となります。
その「宅地建物取引士」の独占業務である「重要事項説明」が不動産取引に関わる紛争でもっとも多い事項となります。
6.重要事項説明に関わる善管注意義務違反
実は、宅地建物取引士の義務には、善管注意義務が課されています。
善管注意義務とは、取引を安全確実に結了させる高度な注意義務で、委任の本旨に基づく「善良なる管理者としての注意義務」を言い、不動産のプロとして通常求められる高度な義務となります。
今回の実務研修では、「紛争の事例」について学習いたしました。とても興味深い事例が多くありましたので、一点だけ紹介したいとおもいます。
事例は、道路計画による土地収用の可能性の存在は瑕疵にあたり、実現が不明な道路計画についても、売主業者及び媒介業者に買主への説明義務があるとされた事例になります。
登場人物は、買主Xと売主Y1、媒介業者Y2となります。
1.紛争の内容
- 買主Xは、売主業者Y1より新築戸建て住宅を7,760万円で媒介業者Y2の媒介で購入
- 本件土地には、区の主要生活道路計画がかかっていたため、建築当時、区は新築される建物については本件道路計画に合わせてセットバックするように指導しており、周囲も従っていたが、Y1は、セットバック指導に従わず建築し、Y2も重要事項説明において記載はしていたが具体的な道路計画の説明をXに対してしていなかった
- その後Xは区への問い合わせで、本件土地の30%以上及び建物の一部が主要生活道路計画にかかっており、事業化されれば収容され建物の一部を取り壊さなければならないことを知る
- Xは、本件道路計画の存在を前提とした適正価格との差額2,250万円余を損害としてY1とY2に賠償請求をする
2.各当事者の言い分
〔買主Xの言い分〕
- 本件道路計画の存在は物件の瑕疵であり、その説明がなかったのはY1、Y2の説明義務違反である
- 本件道路計画の存在を前提とした適正価格との差額等2,250万円余を損害額として請求する
〔売主業者Y1、媒介業者Y2の言い分〕
- 本件道路計画はまだ計画段階で、実現未定であり、説明義務のあるものではない。また、現在Xに損害の発生はなく、仮に道路計画が実施され収容されても区より補償金が支払われるので、本件道路計画の存在は瑕疵といえない。
- 本件主要生活道路のために本件土地が収容されたとしても、公用収容としてXには区から補償金が出るので、Xの損害が顕在化、具体化したとは言えない。
3.本事例の結末
原審を不服とし、控訴審で和解することとなり、控訴審判決は、以下のような判示となりました。
- 本件建物の建築当時、区は新築される建物については計画に合わせてセットバックするように指導しており、Y1は当該指導に従わず本件建物を建築して買主に引き渡していた事実から、本件計画が実現すると、土地が収容され本件物件も存続の危機にさらされる具体的な可能性があったとみるべき
- Y1、Y2からXに対して重要な事実として説明されるべき瑕疵といえる
- Y1,Y2には具体的な説明をしたとは認められない
- 不動産鑑定士による再評価の結果、損害額として1,020万円、弁護士費用として100万円、計1,120万円を認める
以上、「宅地建物取引士」の説明義務、善管注意義務についてでした。









