債権の準占有者への弁済について

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留守宅に泥棒が侵入して、通帳と銀行印を盗まれていまい、泥棒が銀行にて預金の払い戻し請求をしたところ、銀行は本人からの請求だと思い、その泥棒に預貯金を払い出してしまった。

この預貯金の盗難の効果は、どうなるでしょうか?

  1. 銀行が本人と勘違いをし、払い出したので預貯金の払い出しは無効であり債務者である銀行が本人に対し責任をかぶる
  2. 銀行は、本物の通帳と印鑑を持参した泥棒に対し、本人と信じるに過失がないので、払い出しは有効で本人が責任をかぶる


答えは、

民法478条「債権の準占有者に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する」

真正の通帳と銀行印の持参人は、本来の預金債権の受領権者ではないものの、預金債権の準占有者となります。

真正の通帳と銀行印を持参しているということは、一応はその泥棒は本人であると信ずべき外観を備えているので銀行が泥棒を本人であると信じた根拠はございます。

その預金債権の「準占有者」である泥棒に対し、弁済をした銀行が善意無過失であれば、その預貯金の払い出しは有効となります。

つまり、答えは2番となり、通帳・銀行印を盗まれてしまった本人は、預貯金債権の責任追及を銀行側にすることができなくなります。

その代わりと言っては何ですが、泥棒は、本来預貯金債権に対しては無権利者ですから、不当利得返還請求あるいは、不法行為に基づく、預金債権の全額返戻と損害賠償を請求することができます。

とはいえ、相手は泥棒ですから、現実には取り戻すことが難しい事になるだろうと思います。

その他にも「準占有者」には、下記のような者も含まれます。

  • 債権者の代理人と称するもの
  • 無効な債権譲渡による債権譲受人
  • 債権者の相続権を有しない表見相続人

などとなります。


受取証書の持参人

また、民法480条には

第480条
「受取証書の持参人は、弁済を受領する権限があるものとみなす。ただし、弁済をした者がその権限がないことを知っていたとき、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。」

受取証書とは、受領書や領収書、債券証書の類のことです。

例えで言うと、新聞の集金人が既に会社を辞めたのにも関わらず、偽造した領収書を持参して集金に来たとします。それを知らず、知らなかったことに過失もなく、集金人に料金を払ってしまった場合は、その集金人に払ってしまった行為は有効となります。

 

つまり、債権の弁済人を勝たせて、本来の債権者である新聞販売店を負けさせるのが法律になります。

その後は、販売店と辞めた従業員との間での決着になる訳です。

この478条や480条は、保険金請求の準占有者にも該当することが多々あり、過去にも判例がいろいろありますので、注意が必要となります。

ポイントは、社会通念に照らしてどこまでが無過失といえるのか・・・判例等で知っておくことも重要かと思います。

 

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